僕みたいにならないで

 【3月8日】

 タイガースアカデミー岡山校が開校する。指導者は森田一成…年始、そんなリリースを見たとき何だか心が躍った。一成が子供たちにデッカいホームランの打ち方を教えるのか…。ええやんか。

 キャンプが終わったら久しぶりに連絡してみよう。沖縄でそう思っていたので、神戸に戻ってすぐ一成のケータイを鳴らしてみた。

 また、タテジマを着るんだね?

 森田「そうなんです。いい選手を育てられるように頑張ります」

 14年限りで阪神のユニホームを脱いだ彼にとって新しいチャレンジ。「応援してる」。激励とお祝いだけのつもりが、ついつい昔話に花が咲き、長電話になった。

 森田「佐藤くん、すごいみたいですね?」

 いやぁ、飛距離ごっついよ。同じ左打者の飛ばす力でいえば、あのときの一成と同じような魅力を感じる。

 森田「そんな…。僕なんかと比べたら佐藤くんに失礼です。YouTubeで佐藤くんの映像を見ましたけど、エグいですね」

 31歳になった未完の大砲は、昔と変わらない控えめな物言いで笑っていた。おべんちゃらを向ける間柄ではないので、これは僕のホンネだけど、宜野座キャンプで初めて佐藤輝明の飛距離を見たときに思った。僕の知る限り、阪神の左打者でこれだけ飛ばすのは…

 森田一成以外に思い浮かばなかった。

 一成といえば、関西高時代、岡山マスカットスタジアムの右翼場外へ、最上段経由でかっ飛ばした怪物である。あの球場のサイズを知る者なら、その驚弾が分かると思う。阪神入団後初めて1軍キャンプに参加した11年2月のインパクトは忘れない。ピンポン球のように白球が続々サク越え。とりわけ彼の凄みは逆方向への弾道でお世辞抜きに、流し打って宜野座の左翼席をはるかに超えた飛距離は「佐藤以上」の記憶がある。

 あの年の7月、中日戦で能見篤史の代打でプロ初打席に立った一成は、ネルソンの速球を甲子園の左翼席へ弾丸で運んだ。プロ初出場、初打席で、初本塁打は、阪神球団史上初の快挙。高卒4年目だったから、当時の学年でいえば佐藤のひとつ下。えげつないインパクトを残した21歳だった。

 あれから10年、一成に聞いてみた。もし、いま、佐藤に何か話せることがあったとしたら?

 森田「僕なんかが言うのは生意気ですけど…何を言われても気にせず、好きなようにやってほしいですね。僕みたいに結果を求めて小さくならないようにやってほしいです。本当、応援しています」

 右肩に古傷(脱臼)を抱えたままプロ入りした一成は、「大好きだった」阪神タイガースで一流になる夢は叶わなかった。それでも「いい思い出が沢山あります」とセカンドステージで報恩する。

 森田「あ、これは必ず書いておいてください。あの初ホームランですけど、打てたのは風さんのおかげですから…」

 え??

 続きは次回。=敬称略=

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