「ぶち破れ!オレがヤル」の体現者 木浪選手はボクの心をガッチリ掴んだ

 僕は読書が大好きで、阪神関係の本をたくさん読んできた。しかし最近は全く野球に関係がない英語の本を読んでいる。まだ和訳されていないけど、ぜひ日本語版を期待したいのが「Atomic Habits(アトミック ハビッツ)」と言う作品だ。Atomicという単語が持つ“二重の意味”を上手く用いていて、自分の生活習慣に極小(アトミック)な変化をすれば爆発的(アトミック)な成果が出るという概念。それに加えて、その成果は「目標の達成」ではなく、アイデンティティチェンジから出てくるものだと。

 ふと思ったけど、阪神の近年のスローガンはチームのあり方、つまりアイデンティティを形作ろうとしている言葉が多い。金本前監督の3年間は「超変革」(2016年)、「挑む」(17年)、「執念」(18年)と、どれも目標重視ではなく、考え方を重んじる言葉だ。矢野監督のスローガン「ぶち破れ!オレがヤル」も同じことが言える。

 さて今年のスローガンを最も体現しているのは、矢野監督が昨年のドラフト3巡目に抜擢したルーキー・木浪聖也内野手ではないかなぁ…と思っている。だって、ドラフトの日、指名を受けた感想にその強気は溢れ出ていた。

 「阪神は今年最下位だったけど、逆に僕が出て変えてやろうと思ってる」

 社会人出身の木浪は、北條選手と同い年でもあり、高校時代はライバル同士だった。同じ遊撃手ということで春季キャンプでは熾烈なポジション争いを繰り広げた。

 そしてオープン戦。22安打を放ち、球団の新人記録を塗り替え、開幕スタメンを奪取した。しかしそこから17打席ノーヒットでスタメン落ちと早くも窮地に。でもそこで終わるのではなく、またスタメンに復帰し、順調に打ち始めた。

 記憶に新しいのが、5月5日のDeNA戦だ。二回の守備時に2失策、野選1個と精彩を欠くプレーで途中交代になるのか…と思いきや、次の打席で同点タイムリーを放って汚名返上に成功。なんて強い根性なんだ!

 その2日後にプロ初の決勝打を放ち、お立ち台では「チャンスでは『自分に回ってこい』とずっと思っていました。絶対打ってやろうという強い気持ちで…」と力強い言葉。ボクに限らず、ファンの心を掴んだに違いない。

 少なくとも、このルーキーは“矢野野球”を理解している!これからも“アトミックなプレー”を大きく期待したい。

 ◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。98年初めて来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」(http://www.thehanshintigers.com)で阪神情報を配信中。

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