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天才が「金本さんなら20本は打てる」

 金本知憲氏がプロ野球人生の秘話を語る「21年間の舞台裏」。第2回は、93年に記録したプロ初本塁打の記憶。あの天才打者からの突然の予言は、今となれば深い意味があったのか…。

 ただただ、すごいなと思って見ていました。いつかこいつを追い抜いてやろう!なんて思えるレベルじゃなかった。僕がプロに入った当時(92年)、カープには圧倒的なスターがいたのです。

 高卒3年目にして3番を任されて、3割(・308)、19本塁打、89打点の打者ですから、箸にも棒にもかからなかった僕からすれば、雲の上の存在です。練習中の打ち方を見ていても、そりゃもう格好ええなあとほれぼれしました。ほかのチームの主力が教材にしたほどの選手です。もちろん、僕も参考にさせてもらいました。

 前田智徳選手です。年齢は僕より3つ下なんですけど、彼はすでにリーグを代表するスラッガーになっていました。右も左も分からなかったあのころ、彼のすべてを参考にしました。マネをしたこともたくさんあります。バッティングの技術でいえば、バットの出し方から回転から…すべて。どうやったら軸がブレずに、あんなふうにきれいに回れるんだろうって。

 「金本さんなら20本はホームランを打てる」。そんな天才打者が突然、声を掛けてきました。当時は意味が分かりませんでした。でも、この言葉を振り返れば、前田選手なりに深い意味があったのかもしれません。

 僕がプロ初本塁を打ったのは、前田選手が2年連続3割(・317)、27本塁打(リーグ3位)を記録した93年のシーズンでした。球場は北九州。対戦相手は横浜の三浦大輔投手でした。八回に町田公二郎選手の代打で打席に立ち、カーブを右中間スタンドに運びました。打球の軌道もベースをまわった景色もはっきりと覚えています。狭い球場だから入ったような本塁打でしたけど、ホッとしただけの初ヒットのときとは違い、とてもうれしかったことを覚えています。

 三浦投手の完封を阻止した本塁打でしたから、先輩からは『あしたはスタメンだな』とひやかされました。全然、うれしくなかった。それだけは勘弁してくれと思いました。プレッシャーに負けそうで…。ベンチに座っているだけで気疲れしていたのに、スタメンなんて冗談じゃない。でも、次の日は案の定スタメンでした。喜びなんてまったくありませんでした。

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