【虎番が書く阪神連覇秘話】元山が激痛に耐えてつかんだ遊撃定着チャンス 長期離脱避け受けなかった手術
デイリースポーツ虎番記者が、球団初のセ・リーグ連覇を果たした藤川阪神2年目の秘話をリレー形式で明かす。
◇ ◇
後半戦、元山の活躍なくして、連覇はなかったと言っても過言ではない。明るいキャラクターからは想像できないが、前半戦のどん底からはい上がっていた。
昨オフに西武を戦力外となり、一度は現役引退を考えていた。そんな中で舞い込んだ阪神からのオファー。大阪出身ということもあり「地元で野球ができるのはうれしかった」とタテジマに袖を通すことを即決した。
気合十分で臨んだ、新天地でのシーズン。ただ、早々に悲劇が起きた。オープン戦の試合前練習で左手の親指を負傷。患部は腫れ上がり、グラブをはめられなかった。病院で「左手親指の靱帯断裂」と診断された。
普段は明るい性格で、人前で決して暗い姿は見せない。ただ、球場からの帰りの車では1人になる。ハンドルを握る手に巻かれた包帯を見ると、一気に不安が押し寄せてきた。「野球できひんのちゃうかなって。せっかく取ってもらったのに何してんねやろ」と自責の念に駆られた。
選手生命すら揺るがす大ケガに、医師からは手術を勧められた。ただ、受ければ長期離脱は確定。移籍1年目の元山にそんな余裕はなかった。バットのスイングは、まだ耐えられたが、捕球の瞬間が激痛だった。
わらにもすがる思いで、捕手が指につけるサポーターをネットで買いあさった。いくつか試す中で、プラスチックタイプのものがフィット。「痛かったけど、ハマった」とサポーターをつけてプレーを再開した。
復帰後もなかなか出番はなかったが、腐らずプレーし続けた。そして前半戦の終盤に訪れた、移籍後初スタメンのチャンスを生かすと、後半戦は遊撃の定位置を奪取。仲間とともに、歓喜の瞬間を迎えることができた。
「ラッキーが重なった結果やけど、プロに入って、今が一番やりがいを感じている」と話した元山。言葉通り、充実の1年だった。(デイリースポーツ・滋野航太)
