「阪神３－１広島」（１８日、甲子園球場）

　悩める主砲が目覚めた。阪神の森下翔太外野手（２４）が同点の六回１死二塁で、１０打席ぶりの安打となる決勝の左前適時打を放った。６試合ぶりの打点が、同学年のドラフト１位・伊原陵人投手（２４）＝ＮＴＴ西日本＝に３勝目をもたらした。広島との３連戦に勝ち越して首位を堅持。２カードぶりの勝ち越しで貯金は今季最多タイの６となった。

　やっと出た、ここぞの一打に何度も手をたたいてベンチを指さし、喜びを爆発させた。森下が同学年の伊原を攻守で支え、大きな１勝を呼び込んだ。

　「本当に打てなくて迷惑をかけていたので集中して。（伊原）陵人も頑張って投げてくれていたので、いい援護ができたかなと思います」

　六回。同点に追いつき、なおも１死二塁。１ボールから「高めのゾーンを意識して積極的に」と玉村のスライダーを振り抜いた。白球が左翼の芝生に弾み、二走・中野が生還。直近５試合は１８打数１安打と苦しみ、前日は試合途中で魚雷バットに変えるなどもがいていた。

　そんな中で放った勝ち越し適時打は、５月１０日・中日戦以来６試合ぶりの打点に。伊原に３勝目をプレゼントし、「自分が打って勝利をあげられたらと思っていたので、すごくいい結果になって良かった」とうなずいた。その気持ちは守備にも表れた。四回２死三塁で坂倉の打球を右翼フェンスに激突しながらキャッチ。好守で左腕を救った。

　２０００年生まれの２人は普段から仲が良い。たわいもない話もするが、自然と多くなるのは野球の話。「どういう感じで打席に入ってる？どういう狙いがあった？」と伊原から打者としての意識を聞かれることもあれば、森下が投手心理を尋ねることもある。意見交換をしながら高め合っている。

　伊原は森下の性格を「明るくて、チームの中心になるような選手。元気を出して盛り上げるタイプ」と表現。「僕もそっちのタイプなので、一緒にチームを盛り上げることができたら」と伊原にとっても森下は大きな存在になっている。この日はまさに２人でチームを引っ張り、導いた勝利だった。

　上昇きっかけに

　一緒に上がったお立ち台でも聖地を大いに盛り上げた。森下が「ナイスピッチ」と声を掛け、伊原が「今日は守備に打撃にありがとうございました。これからもよろしくお願いします」と互いをねぎらい合った。最後は締めをどちらが言うかを巡り、森下が伊原のマイクを奪う一幕で笑いを誘った。

　チームの首位を守り、今季最多タイの貯金６で２０日から巨人を迎え撃つ。勝利を呼んだ一打にも「まだじゃないですか」と森下は気を引き締める。これをきっかけに、再び上昇気流に乗っていく。