阪神V奪回へ攻略のカギは 巨人キャンプ潜入「攻撃」「守備」「新鮮力」強さと攻略ポイント探った
連覇か、奪回か-。「ストップ・ザ・巨人」を合言葉に各球団がシーズンを勝ち抜くためのキャンプを送っている。阪神が巨人の勢いを止め、2年ぶりの頂点に立つカギは。昨季、巨人担当として4年ぶりのリーグ優勝を見届けた阪神担当・田中政行記者が巨人キャンプに潜入。「攻撃」「守備」「新鮮力」の項目に分け、戦力分析と攻略のカギを探った。
★攻撃編
今年の沖縄は雨が多い。巨人の強さと攻略ポイントを探る潜入取材。この日はドームでの練習になったが、淡々とメニューを消化する選手に風格を感じる。「監督はどうだ?」。話を聞こうとした阿部監督から逆取材を受けた。現役時代は互いにチームの顔として戦ったライバル。意識は強い。
中日から絶対的な守護神・マルティネスが加入。昨季12球団トップの救援防御率を誇ったリリーフ陣は八回に大勢、六、七回にはバルドナード、ケラー、高梨、船迫らがそろう。故に他球団のスコアラーは「五回までにリードを奪え」「先発を打ち崩せ」と攻略ポイントを絞る。阪神も巨人に匹敵する投手力があるだけに勝機はここにある。 昨春キャンプ中に「阪神との違い」をテーマに、徹底的にデータを出してミーティングで分析した。導いた一つの結論が「阪神=近本のチーム」。一昨年の対戦打率が・291、4本塁打で出塁率・357だったが、昨季は同・255、1本塁打で同・324。1番打者を封じたことがシーズンの結果に直結した。
村田総合コーチは「阪神は近本の出塁率を抑えて、という戦い方は今年も変わらない」と明かす。「足も使える選手が走者にいれば中軸に対して集中が分散する。我々としては近本を抑えることができれば、必然的に得点を抑えることができるはず」。近本が包囲網を上回る活躍をすることが理想だが、巨人戦では特に2番・中野、3番・佐藤輝がポイントになる。
巨人の開幕ローテは現状、2年連続の開幕投手に決定した戸郷からグリフィン、田中将、井上、山崎、西舘が有力だ。橋上作戦戦略コーチは「阪神やウチに限らず、今は投高打低が顕著」と分析。その上で「言い方を変えればしのぎ合い。いかに点を取るかより、いかに失点を防ぐかを前面に出していく方が、結果的に多く勝てるんじゃないか」と言う。1点を奪い、1点を守る攻防。先制点が勝敗を分ける。
★守備編
昨季リーグ優勝した巨人は、マルティネス、田中将など、オフも補強の手を緩めなかった。総額64億円と言われる大補強の中で、阿部監督が「なんとしても欲しい」と譲らなかったのが、ソフトバンクから国内FA権を行使した甲斐の獲得だ。
「優勝するチームには絶対的な司令塔が必要」と話すだけに、ラブコールが実ったFA戦士が正捕手に座ることに疑いはない。だからこそ他球団のスコアラーは「試合終盤、甲斐に代打を送る展開に持ち込む」ことが、接戦における勝敗のポイントになると分析する。
橋上コーチが「投高打低の野球界の中では、時代に合った戦い方になる」と話すように、巨人の戦い方は昨季同様に守備力に比重を置く。接戦覚悟の僅差で終盤まで持ち込み、「甲斐に代打」を出さざるを得ない状況を作ることができれば、ここに勝機が見えてくる。
「短いイニング、少ない球数勝負になるリリーフは、先発投手以上に繊細な投手が多い。いくら大勢、ライデルとはいえ、捕手がコロコロ代われば、多少の投げにくさが生まれる」と同スコアラー。甲斐不在なら盤石のリリーフ陣に、揺さぶりをかけることができる。
甲斐はこの日の全体練習後、4時間を超える打撃練習を行った。「20本は打てる力がある」と話す阿部監督が連日直接指導するなど、正捕手の打力が勝敗を分けると自他共に認める。「彼は新しいチャレンジだと捉えている。俺が正捕手だと安心していない。その入り方はさすがですね」とは村田コーチ。相手も手ごわいが合言葉は「甲斐のバットを封じろ」-だ。
★新鮮力
1軍キャンプに帯同する新戦力は、投手がマルティネス、田中将、田中瑛、石川の4人。野手では新外国人のキャベッジと、ドラフト3位の荒巻(上武大)が名を連ねる。ただ、シーズン前の段階で助っ人野手や、ルーキーの実戦での対応力は未知数。ここでは“新鮮力”を紹介したい。
球団内外から「今年、レギュラーを奪う」とうわさされるのが5年目の22歳、中山だ。侍ジャパンの井端監督も宮崎キャンプ視察で「打撃は昨年もいいものがあったが、輪をかけて力強くなった印象です」と絶賛。チャンスをつかむことができれば一気にブレークの予感だ。
36歳のベテラン・坂本の状態も良く、現時点でケガさえなければ開幕三塁は当確。中山は遊撃・門脇が不振や坂本の休養日など、まず限定的な起用から結果でアピールが求められる。「優勝の瞬間をグラウンドで味わいたい」とし、勝負の5年目に懸ける。
一方、投手ではDeNAから戦力外通告を受け、巨人に加入した左腕・石川の表情が上々だ。阿部監督はチェンジアップを特に評価。「先発で使いたくなっちゃうよ。中継ぎでも、ロングでも…悩みどころが増えるね」とうれしい悲鳴を上げる。中山と石川。2人のジョーカーがカギを握る。
★潜入取材総括
巨人から現役ドラフトで加入した畠に、今回の潜入取材で糸口がないか聞いた。「1つ言えるのは僕だけ1人、2年連続の90周年イヤーですね」。独特の表現に一瞬?マークが浮かんだが「そんな違いは、感じないんですよね」と続く言葉には妙に納得させられた。
「伝統の一戦」という言葉通りに、球界の歴史を紡いできた両球団。橋上コーチに「最も警戒する球団は」と聞くと、「そりゃデイリーさんとしては阪神でしょ」と笑いながら、5年間、BCリーグで指揮を執って感じた言葉を続けた。
「特にセ・リーグは巨人、阪神が強いと盛り上がる。間違いなく阪神は上位で戦う可能性を秘めたチームです」。昨季優勝した巨人と、一昨年の王者・阪神。互いに戦力的にも充実期を迎え、TGで上位争いをする構図は疑いようがない。1点勝負の接戦が予想される中、両監督の采配がキーポイントになる。
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