阪神・佐藤輝は大打者になれるか、普通の強打者で終わるか 今季が分岐点~元阪急・長池徳士理論

 長池徳士さん
 長池徳士さん
 ランチ特打で柵越えを連発する佐藤輝=16日
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 阪急ブレーブス時代に不動の4番打者として活躍し、本塁打王と打点王のタイトルを各3度獲得した長池徳士氏(79)が、プロ4年目を迎えた阪神・佐藤輝明内野手(24)の“新打撃”に注目する。飛躍か停滞か。今季が同選手の野球人生を占う大事なシーズンになるという。

 今年の佐藤輝の打撃スタイルに、長池氏は昨年との違いを感じている。「佐藤はいいところに気がついた」というその変化は、バットを構えたときのグリップの位置と右手小指の使い方だ。

 「グリップの位置が去年は耳の上だったのが、耳の下まで下がっている。それと昨年までグリップエンドに掛けていた小指を、今は掛けずに握っている。これらはいい傾向ですよ」

 なぜいいのか?

 「グリップ位置が高すぎるとボールを最短で捉えられず、どこかで修正する。それで余分な動きが生まれ、その結果遅れる。でも、もっと下げてもいいね。上の(左)手が肩のあたりまで。このほうがボールを長く正確に見ることができて、最短距離で捉えて押すことができると思いますよ」

 小指に関しては?

 「グリップエンドに引っ掛けると“ヘッドの走りがよくなる”という利点はあるけど押し込めない。ホームランを打つには普通に握るのがいい。ただ、本人はショートの方へ抜けていく打法を意識しているみたいだが、右中間へガツンと打つつもりで振る。インサイドアウトでは内角を打つのが難しい。インサイドインの軌道が望ましいね」

 佐藤輝は新人年から3年連続で20本塁打以上を放ち、堂々たる成績を残してきた。昨季の92打点は4番・大山の78を上回るチーム第1位。評価されて然るべき数字だが、何しろ期待値が高い。

 今後、大打者への道を歩むのか。それとも“普通の強打者”で終わるのか。魅力的な選手だけにその動向は気になる。

 「4年目なら30本塁打を超えて、打率も3割を打たないと。大学を卒業して3、4年が経つと色が着いて、それを剥がすのが難しくなるから、今年が大事です」

 “色が着く”との表現で長池氏が懸念するのが内角攻めへの対応だ。球速に押されて詰まる。この課題を早く解決する必要がある。

 「彼は器用で感性もよく、瞬間的に当てるのがうまいし、スイングスピードがあるからポンと打てて、あれだけの成績が残せる。素質だけでやってる感じ」

 実に“もったいない”というのが正直なところだ。

 ではその対策は?

 「ボールとの距離を取ること。距離が取れないから打てないんです。投手が投げたボールを目で見て判断して体の前のポイントで打つ。この感覚をなんで早く覚えないのかなあ。それは数を打って体で覚えるしかない。頭で分かったものはある日、忘れてしまうものです。体で覚えたものは忘れない」

 ほかには?

 「上体と足のバランス。彼は手と足が一緒に動くタイプ。ステップした右足が着いて一瞬の“間”を置いたあと、手が出るようにならないと」

 タイトル合計6度のほか最優秀選手にも2度輝いた長池氏自身、「苦手の内角を克服するのに必死」だった。だが、これをさばけるようになったことで「打てる範囲が広がった」という。だから打撃の原点は「内角高めの速球を打ち返すことにある」と断言する。

 佐藤輝の打撃フォームで気になる点はほかにもある。スイング時に左肩が下がることだ。

 「肩が下がるとボールを押し込めない。相撲でも脇を締めないと押せないでしょう。彼は“パン”と弾くタイプ。ホームランバッターはボールを捕まえたあと、10センチほど押し込む。縮めた肘を伸ばすという動作です。これらができれば40本打てるし、ホームラン王も獲れると思う」

 さらに長池氏は追い込まれるまでは本塁打だけを狙うべきだと話す。外角の変化球を軽打しても未来はないからだ。

 「今の佐藤のホームランゾーンは真ん中低め。内角も低めなら打てると思う。そこばかりを狙っていればいい。そして少しずつゾーンを上げて、それが打てるようになれば投手は外へ投げるようになる。そうなったらシメたもの。投手が逃げてるわけだから」

 内角攻めを克服したあとは?

 「(ホームベースへ)寄ればいいだけ。自分から攻めていくんです。外角はバットが届く自分のポイントで待って引っ張ればいい」

 佐藤はこのオフ、米国の「ドライブライン・ベースボール」で科学的トレーニングに取り組み、下半身の使い方などを研究。年間を通して好不調の波を少なくし、安定した成績を残すための試みだという。

 今キャンプは順調そうに見えるが、果たして成果のほどは。飛躍の4年目となるのか。

 「打撃は難しいし、人それぞれだけど、僕の思いと佐藤の成績が合うのか合わないのか。これが今年の僕の一番の注目点なんですよ」

 果てしなく続いた打撃論。80歳を目前にした長池氏は元気いっぱい。実に楽しそうだった。

(デイリースポーツ/宮田匡二)

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