【とらものがたり・村上頌樹投手編(5)】高い壁越えスタイル確立した東洋大時代

 18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に貢献した阪神選手の野球人生に迫る新企画「とらものがたり」。大竹耕太郎投手に続く2人目は、プロ未勝利から今季のMVPに輝くまでの大ブレークを果たした村上頌樹投手(25)が登場する。第5回は波乱万丈な大学時代を振り返る。

  ◇  ◇

 高い壁にぶつかっては、越えてきた。センバツVを果たし、鳴り物入りで東洋大へ入学した村上。1年春のリーグ戦からベンチ入りし、新人賞を獲得した。一見、エリート街道を歩んでいるように思えるが、その道のりは平たんではなかった。

 「大学の時はすごい先輩たちがいっぱいいたので、追いつこうと、がむしゃらでした」。入学当初、2学年上には上茶谷(DeNA)、梅津(中日)、甲斐野(ソフトバンク)の3本柱が存在した。自身とは違い、長身から球速150キロ超えの直球を投げ下ろすタイプの先輩たち。必死で食らいついた。

 だが、2年時には故障もありリーグ戦未勝利。「自分でも原因が分からなかった」と突如、高い壁が立ちはだかった。当時の杉本泰彦監督(現在は徳島・海部高監督)は、こう振り返る。「4年生にでっかくて球の速いやつらがいたので、『力勝負するなよ』とは言ってましたけど、強いボールを求めすぎたんだと思います」。自分を見失いかけていた。

 それでも、折れなかった。智弁学園でバッテリーを組んだ岡沢智基捕手(現Honda鈴鹿)に配球の相談をするなど一からの見直し。大学ナンバーワンの回転数と呼び声が高かった直球を軸に、変化球にも磨きをかけた。「自分はそういうタイプじゃない、それでは勝てないと気付いたんじゃないですかね」と杉本監督。持ち前の制球力を武器に、スタイルを確立させた。

 先輩3人が卒業後は、名実ともにエースとしての活躍を見せる。3年春のリーグ戦では6勝をマークしてMVPに。「試合で投げるのが、ベンチでいるよりやっぱり良いですね」と自信を持ってマウンドに立ち続けた。

 再び試練が襲ったのは大学ラストイヤー。春4連覇、さらにはドラフトへ向けたアピールに燃えていた春のリーグ戦が、新型コロナウイルスの影響で中止となった。一時はチームが解散し、我慢の時を経て迎えた秋季リーグ戦だったが、開幕戦の中央大戦で四回に緊急降板。右前腕の肉離れだった。

 3年春のリーグ戦だけで驚異の70イニングを投じるなど、腕を振り続けていた村上。「ケガするべくしてケガしたと言われました」。ドラフト直前に無念の戦線離脱。だが、この出来事が再び猛虎との縁をつなげることとなる。

 ◆村上 頌樹(むらかみ・しょうき)1998年6月25日生まれ、25歳。兵庫県南あわじ市出身。175センチ、80キロ。右投げ左打ち。投手。智弁学園3年のセンバツで優勝し、東洋大を経て20年度ドラフト5位で阪神入団。21年に2軍で最多勝、最優秀防御率、最高勝率の3冠。22年も最優秀防御率、最高勝率の2冠。21年5月30日・西武戦で1軍初登板初先発。今季は最優秀防御率のタイトルを獲得するなど大ブレークしてリーグ優勝&日本一に貢献。セ・リーグMVPと新人王をダブル受賞した。

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