【岡義朗氏の眼】足を警戒しすぎた巨人と足を封じた阪神 明暗を分けた初回の攻防
「巨人1-6阪神」(21日、東京ドーム)
阪神が才木浩人投手(23)の好投と先発野手全員安打の猛攻で快勝した。デイリースポーツ評論家の岡義朗氏は好リードの梅野と中野、島田の1、2番コンビの機動力に着目。特に5度出塁し、3得点した中野の足による“揺さぶりの効果”を強調した。
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才木は直球に威力があり、フォークがよく落ちていた。六回に吉川が中途半端なスイングで三ゴロに倒れたが、それ以外の凡退は三振かフライアウト。“キレ”が抜群だった。
ただ立ち上がりは不安定だったね。一、二回は先頭打者にヒットを打たれる苦しいマウンドだったが、両方とも梅野の好アシストで切り抜けた。
一回は吉川の二盗を阻止。2点差の状況を考えると、単独盗塁は常識的に考えにくい。おそらく何らかの根拠をもった仕掛けだったはず。案の定スタートがよかっただけに、殺せたのは大きかった。これが巨人に“流れ”を渡さなかった最初のポイントだ。
2つ目は二回。安打と四球による無死一、二塁のピンチを迎えたが、巧みなリードでかわした。ウィーラーと大城を連続三振に仕留めたのはフォークだったが、途中の配球に工夫が感じられた。二死一、二塁からはカウントを悪くした若林との勝負を避け、無理することなく冷静にシューメーカーを料理した。
その後の巨人打線は速い球を打ち上げ、フォークに空振り。この梅野の立ち回りが才木の好投を生んだと言える。
一方攻撃面に目を移すと、いかにも一回の攻防が明暗を分けたと感じる試合だった。
プレーボールと同時に阪神は先頭の中野が中前打で出塁した。続く島田の打席でシューメーカーが一塁へ牽制悪送球。中野の“行くぞ、行くぞ”という揺さぶりにまんまとハマってしまった。
一見、モーションが速そうで、実は時間がかかるシューメーカーは、中野の動きが気になっていたのだろう。これをきっかけに巨人は2失点。いきなりハンデを背負うことになった。
なにも盗塁を決めることだけが機動力ではないからね。走る意思をチラつかせるだけでも意味がある。
六回は1死後、四球を選んだ中野が島田との間でランエンドヒットの形で攻めた。結果はファウルだったが、その4球目を島田が右線へ二塁打。150キロの速球を完璧に捉えていた。
これも中野の足が気になっていたからこその失投だろう。3球目のスライダーのあとの直球。島田は中野に打たせてもらったようなものかもしれない。
このコンビで作った一死二、三塁ではロハスの二ゴロを吉川が、本塁へ送球して野選となり、中野が4点目のホームを踏んだ。足を使われての失点はダメージが大きいものだ。
この日の阪神は、岡本和の一発による1点に終わった巨人とは、実に好対照な試合運びだった。