「広島７－６阪神」（２８日、マツダスタジアム）

　足が速いだけでは、数字を積み上げることはできない。瞬時の状況判断と、迷いのないスタート。阪神・近本が、土埃（ぼこり）を巻き上げ、二塁ベースを陥れる。新人から３年連続となる２０盗塁を決めた。

　４点を追う四回無死二、三塁から右前適時打で出塁。一塁上では、マウンドだけを見つめていた。野村の頭の位置、足の動き、呼吸。中野の打席で投球する前にけん制されると、集中力を高める。直後の初球にスタートを切り、二塁を盗んだ。

　無死二、三塁と好機を広げた盗塁。これで、今季２０盗塁に到達した。球団では２００１年から０９年に９年連続の赤星以来、３年連続となる２０盗塁。積極的な走塁で、攻撃の流れを作った。

　秀でた盗塁技術。近本は盗塁を試みる上での重要点について「走る勇気を持つことです。いいスタートを切らないといけないとか、アウトになってしまうかもとか、いろいろ考えてしまう。それよりも、勇気を持ってスタートを切ることが一番大切」と話す。走りだす前の準備を大事にしている。

　ルーキーの中野は２５日のＤｅＮＡ戦（京セラ）で、すでに２０盗塁を記録。そのため、この日の近本の躍動でチームの２０盗塁以上の選手が２人に。これは阪神では１９８２年のアレン（２２個）、北村（２５個）以来、３９年ぶりの記録となった。

　好調のバットと快足で猛虎打線をけん引している１、２番。矢野監督は「（盗塁や走塁は）勢いっていう部分では付くし、数字だけに表れない部分で相手にプレッシャーもかかっている。走塁って見た目にもムードが上がる」と走る重要性を説いていた。チームを勝利に導くために－。盗塁王を争う虎のスーパーカーコンビは、ダイヤモンドを駆け回る。