宮崎恒彰氏が振り返る虎の神戸&大阪パレード 利益をファンへ還元できた

 2006年から2年間、阪神の第8代オーナーを務めた宮崎恒彰氏(77)が、デイリースポーツ紙面で激動の日々を振り返ります。02年に取締役としてタイガースに入団。黄金時代の構築に尽力し、村上ファンド問題、30億円問題など、猛虎の危機に立ち会ってきた。

  ◇  ◇

 2003年9月15日、星野監督は甲子園で宙に舞った。同日の広島戦で挙げた81勝目は球団記録を更新し、主催試合の観客動員が史上初めて300万人を突破。日本全体がタイガースブームに沸き返る一方、宮崎氏はブランド戦略に向けて着々と動いていた。

 同年7月、グループ企業でもない大手スーパーマーケットからこんな依頼が届いた。「優勝セールをウチでもやらせてもらえませんか?その前の応援セールもできませんか?」。この言葉に最初は驚がくしたという。

 「優勝セールなんて阪神百貨店以外、どこもやらないもんやと思い込んでいた。別に何も支障はないし、ありがたいことやとOKを出したんです」

 すると1カ月後、他の百貨店やスーパーから同様の依頼が届いた。ここで新たなビジネスが動く。タイガース優勝というブランドを生かし、セールを実施するためのロイヤルティーを求めた。

 「最初はナンボもらっていいか分からんからね。百貨店なら百貨店、スーパーならスーパーで業態分けをして。1坪いくらの売り場面積でロイヤルティーを決めたんです。阪神百貨店の社長にも聞いて、御堂筋だけではやらんとってと要望を出してね」

 多岐に渡ったブランド戦略は優勝ブームの猛烈な勢いと重なり、大成功を収める。球団の利益は前年比で大幅に上がった。しかもロイヤルティーには原価がなく、売り上げすべてが純利益として積み重なった。

 「久万さん(オーナー)も手塚さん(電鉄本社社長)も納得してくれましたわ。まんざらやないと(笑)。そこから選手に高い金を使うことに関してはあまり言わなくなったんですね」

 その一方、電鉄本社と球団は応援してくれたファンへ、利益を還元する方向へと動く。感謝の思いを示すために、神戸、大阪の2大都市で優勝パレードを実施する方向で調整に入る。

 「パレードする言うても簡単なもんじゃない。警備とかの費用を考えたら、(広告や協賛など)多方面からの支援もたくさんありましたけど、総額では、億単位の相当な費用がかかったと思いますよ」

 11月3日、2大都市パレードは実現。雨が降りしきる中でも大阪に40万人、神戸に25万人のファンが詰めかけた。そこで、ユニホームを脱ぐ星野監督はファンに感謝の思いを伝え、指揮官としての別れを告げた。

 「仙さんが来てから利益の好循環というか、うまく回ったんですね。社内でもPR経営の話が出たり、グループの戦略も変わった」

 暗黒時代に終わりを告げたタイガース。そして夢のような歓喜の瞬間は2年後、再びやってくる。岡田彰布監督の下、チームは成熟期を迎え、常時Aクラスの黄金時代を歩むことになる。

 ◆宮崎 恒彰(みやざき・つねあき)1943年2月9日生まれ、77歳。兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業後、65年に阪神電鉄入社。88年、関連企業の山陽自動車運送に出向後、96年本社取締役、00年常務、社長室副室長。04年代表取締役専務となり、06年6月から08年6月まで阪神タイガースのオーナーを務めた。

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