井川慶氏 「29」後輩・遥人へ投球術伝授「最初からいい球を見せない」

 虎の新旧『29番』が投手論を熱く語り合った。元エースの井川慶氏(40)と、未来のエース候補・高橋遥人投手(24)の対談が実現。初対面の大先輩を相手に最初は緊張気味だった高橋だが、次々と質問をぶつけた。井川氏は的確なアドバイスを送るとともに「遥人君が頑張れば阪神は優勝できるんだよ」とハッパをかけた。対談その2。

  ◇  ◇

 井川「遥人君は緊張するタイプ?」

 高橋「はい。特にしゃべるのとか、すごい苦手です」

 井川「登板前も緊張?」

 高橋「してます。井川さんはどうでしたか?」

 井川「集中はするよね。わざと緊張感を高める感じかな。いろんな想定をして準備はしっかりして。あがったりはなかったかな。もうそこは慣れたんじゃない?」

 高橋「はい…何となくは…。あの…みんななのかもしれないですけど、打たれたら僕しょんぼりしちゃうんです」

 井川「じゃあ、打たれたら試合のあと何かすることとかある?」

 高橋「なんで打たれたのかを映像とかで見てますけど。僕の場合、序盤から中盤にいく五回とか六回ぐらいにいつも点を取られちゃうんです。井川さんって、どうやって抑えていたんですか?」

 井川「自分の場合は立ち上がりがまず難しくて。そこを乗り切って1周させれば、2周目はその“裏”でいけばいい。“表”で投球したら“裏”で回す。1周目は真っすぐで押していけば、2周目は変化球でやれば何とか対応できる。で、3周目が勝負っていう感じ」

 高橋「3周目は全力でいくんですか?」

 井川「全力というか。“表”と“裏”と状況を考えながら織り交ぜる感じかな」

 高橋「1周目と2周目を変えていたんですね…」

 井川「そう。1周目にいい立ち上がりができたら、絶対2周目はいけるはずなんだよ。だから立ち上がり、そこに気をつけて投げれば。2周目でつかまるというのは…やっぱり1周目と同じようにやっていたら、つかまりやすいよね」

 高橋「僕は速いボールしかないんですよね。抜くボールがない。井川さんはストレートにチェンジアップがあったじゃないですか」

 井川「カットボールがあるじゃない。あれエグいよ。いいカットあるじゃん。映像で見たことあるけど」

 高橋「あれを投げ始めてから、左打者は楽になったんですけど。シーズンの後半は右バッターにボッコボコに打たれちゃって。自分の中で抑えるパターンっていうのがだんだん出来上がっていたんですけど、それを急に振ってくれないとか、そうなった時に引き出しがなかったというか…」

 井川「序盤から頑張って投げすぎなんじゃないの?全力で抑えにいくと後半はもたないっていうか。同じ球になってしまうから。できれば序盤が8割とか。それぐらいでできれば」

 高橋「ストレートも8割とか軽くですか?」

 井川「そうそう。で、ここぞってとこに10割っていうか、最高の球を持っていけば。真っすぐでもまだ通用するというか。ペース配分だよね。最初からいい球は見せない」

 高橋「僕は全力でいってるんですよ、最初から…。先頭バッターもいかないんですか?」

 井川「いかないっていうか、4番とか、いい打者ほどあえてあまり(全力で)いかない。打順を見て…言葉は悪いけど、8番とか9番とか“アウト要員”っているでしょ。このバッターは普通にやればアウトにできるっていう。そういうバッターはしっかり取っておかなきゃならない。で、ヒットを打たれるかもしれないって打者は、打たれるのは5割の確率かなっていうぐらいの気持ちで勝負すればいい」

 (続けて)

 「出してもいいんだから。結局(本塁に)かえさなきゃいいから、取れる相手からアウトをしっかり取っていけばなかなか点は入らないから、野球って。だから自分の力と相手の力を見て、アウトを取れるバッターを計算していっとかないと。ずっと全力だと疲れちゃうよ」

 高橋「僕もバッターによって、力の加減を変えることをある程度はやっているんですけど、シーズンの後半になると、その(アウトを取れるはずの)バッターにも打たれてしまって。今シーズンでも、最初の方はヤクルトと結構相性いいのかな?なんて思ったんですけど、9月に入って2試合で13点取られたんですかね。その時はみんながものすごいバッターに見え始めて…。僕はツーシームか真っすぐなんですけど、右バッターを抑えるのは。そのツーシームも全く振ってくれなくなって。あ、緩いボールを使わなきゃダメだなって感じて」

 井川「確かにヤクルトって伝統的に打線で攻めてくるっていうか。あるピッチャーに対して、みんなで攻めにかかってくるっていうか。統一してファウルを打って、球数増やしてつぶしにくるとか。やっぱ研究はされるよね、すごく」

 高橋「研究されてる感がすごくて。ヤクルトとカープはホントに、すごいみんなで徹底してきているなって感じました」

 井川「だからその逆を突いてあげれば…って簡単に言っちゃうけど。そういう意味では引き出しは増やしたいよね」

 高橋「僕ってツーシームがスプリット系なので。そのボールが右バッターを抑えるパターンのボールだったんですけど、それが通用しなくなったのがヤクルトとカープ」

 (続けて)

 「やっぱり大量失点するパターンって、抑えられるバッターを出してしまった場合ですか?」

 井川「そうだね。なんか打たれてないんだけど、打球が間に落ちるとか。よくあるじゃない。それはどうしようもないじゃん。だから、何かを変えなくちゃいけないと考えてみる」

 高橋「そういう時って思い切って変えた方がいいんですか?僕って大量失点をめちゃくちゃするタイプなんで」

 井川「タイプによるとは思うけど。例えばすっごい怒りをぶつけるとか。訳も分からず、こんにゃろ!ぐらいの感じで投げるか、あるいはもうめちゃくちゃ力を抜くか。やる気ないぐらいにホイって投げて。さあ、ここを抑えたいって時によく打たれて、その次のバッターに適当に投げたら抑えられたとかってあるじゃん」

 高橋「あーありますよね」

 井川「そう、その適当にいって抑えたパターンでいってやるとか。大量失点しそうな時は、いろんな操作をしながらやってみるのがいいかも」

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