西 完封!移籍後初勝利 志願の140球!コイ斬り笑顔満開や

 力投する西=マツダスタジアム
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 「広島0-9阪神」(7日、マツダスタジアム)

 これが虎の救世主の実力だ。阪神の西勇輝投手(28)が移籍後初勝利を12球団一番乗りとなる完封で飾った。リーグ4連覇を目指す王者・広島を散発6安打と圧倒。最後まで力強い投球でマウンドを譲らなかった。この力投に導かれるように打線が爆発。今季初の2桁となる13安打で今季最多9得点を奪い、カード勝ち越しに成功。新加入の右腕が波に乗れないチームに勢いをもたらした。

 27個目のアウトをマウンドで見届けると、3時間12分のワンマンショーが幕を閉じた。広島の夕日が右腕の笑顔を照らす。投手として至福の瞬間。「自分のわがままで(最後まで)行かせてもらいました。投げ切れて良かった」。移籍後初勝利は17年4月9日以来となる完封。スタンドの大半が赤く染まる中、西は三塁側上段の虎党に深々と頭を下げた。

 初回が最大のヤマだった。先頭の田中広を死球で出塁を許し、菊池涼に左前打でつながれ一、二塁。3番・野間は遊ゴロに仕留めたが4番・鈴木に四球を与えて満塁のピンチ。「あそこが一番、つらかった」。だが続く松山を初球で一ゴロ併殺に料理し、無失点で立ち上がりをしのいだ。

 これで流れに乗った西は変化球を両サイドに投げ分ける、“らしさ全開”の投球で鯉打線を手玉に取った。カーブ、スプリットも織り交ぜて的を絞らせず五回から八回までは二塁すら踏ませない。

 球数が七回で100球を超えても八回も迷いなく打席へ。最終回は1死二塁と久々に得点圏に走者を背負ったが、直球は145キロを計測。スタミナと集中力を途切れさせることなく散発6安打。140球の熱投でセの王者の前に仁王立ちした。

 理想の投手像はダイエー、ソフトバンクで活躍した斉藤和巳氏。少年時代から「カッコ良かったし、こういうピッチャーになりたい」と心を動かされた。オリックス時代にはソフトバンクで斉藤氏とバッテリーを組んだ経験のある山崎勝から話を聞き、「和巳さんが投げる時はチームが勝たなければいけない、勝てる雰囲気になる。そういうピッチャーになりたい」と胸に刻んだ。

 3月31日の自身初登板で黒星を喫してからチームは4連敗した。「連敗が始まったのは自分から。前を向いてやるだけでした。9点も取ってくれたら完投するのが普通」。責任感の強さは、理想の投手に近づきたい思いがあるからだ。

 矢野監督も「文句なし」と右腕に最敬礼。ただ西自身は移籍後初白星に「みんなが、『勝った』という共有でいいのかな」と冷静な口ぶりだった。次回は本拠地・甲子園で初登板となる見込み。猛虎に新風を吹き込むFA戦士の物語は、まだ始まったばかりだ。

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