矢野監督「一生忘れない1勝」チーム一丸で初勝利、緊張も楽しめた
「阪神2-1ヤクルト」(29日、京セラドーム)
選手、ファンと感情を爆発させた。理想とするチーム一丸でつかんだ初勝利。阪神・矢野監督は声を上ずらせた。
「どんな形でも勝てたのは、一生忘れない1勝になると思う」
験担ぎをしないことが験担ぎ。普段通りで臨んだはずが、開始後は冷静さを失った。「どんだけかくねんっていうぐらい手に汗をかいていた」。それでも選手が躍動する姿で平常心を取り戻した。六回は近本の同点三塁打で両拳を突き上げた。延長十一回に鳥谷が三塁打を放つと、ベンチ最前列まで飛び出した。
「俺自身は緊張しながらも楽しめた。選手もそういうムードで戦えたかなと思う」
チーム一丸-。就任から目指してきた形だった。キャンプから競争を掲げる一方で、心のケアにも重点を置いた。通常は1軍から2軍への降格はヘッドコーチが通達する。指揮官は慣例にならわず、必ず自ら声を掛けた。
「競争は終わったわけじゃないから」
「力が必要な時が来るから頑張ってくれ」
対話を通して求めたものは結束力。一度も声を荒らげず、風通しのよい環境も作った。日を重ねて理想に近づき、開幕戦で一端を示した。
日本一の物や、食べ物にこだわりを持つ指揮官には、将来の夢がある。「いつか富士山に登りたい」。今、目指すものは野球界の頂。初勝利の先に、確かな道筋が見えた。