金本監督、糸井に「星野式」アタック FA初交渉で「恋人以上」

 阪神がFA交渉解禁日の11日、オリックスからFA宣言した糸井嘉男外野手(35)と大阪市内の高級ホテルで初の入団交渉を行った。前夜キャンプ地の高知・安芸から帰阪した金本知憲監督(48)も同席し、02年オフに自身がFAで口説かれた「星野流」の“脅迫ラブコール”をぶつけた。糸井は返答を保留したが、手応えは得た。金本監督は「阪神糸井」誕生まで星野流で口説き続ける。

 金本監督に闘将の魂が宿った。正午過ぎに始まった糸井との初交渉は約1時間。大阪の街並みを一望できる29階のエグゼクティブスイートルームに熱気がこもる。ありったけのラブコールを届けようと、真っすぐな気持ちをぶつけた。

 「俺にとっては初めての恋人だから」

 48年間の人生で女性にも告げたことのない口説き文句で、「むちゃくちゃ緊張しました」という糸井の心を和らげた。周到に美辞麗句を準備していたわけではない。自然と14年前に自身が口説き落とされた恩人の情熱が乗り移っていた。

 「このチームを優勝させたい。とにかく、チームが勝つために力になってほしい」

 自身がFA宣言し、阪神入りを表明したのは02年11月。実は2度阪神からの誘いを断っていたにもかかわらず、当時の星野監督に「どうしても優勝するため、タイガースを強くするために必要な戦力なんだ」と口説かれ、縦じまに袖を通すことを決めた。金本監督はのちに星野流を「半ば脅迫だった」と述懐している。糸井に贈った飾り気のない殺し文句は、くしくも闘将のそれと類似する。

 「僕の場合は、あまりにも星野さんの強引すぎるお誘いで無理やり連れてこられたところはありましたけど、僕は穏やかな熱意を持って、しかし星野さんに負けないぐらいの思いを伝えました」

 前夜、秋季キャンプ地の高知から空路大阪に戻った。11日の練習を高代ヘッドコーチに預け、電撃交渉に同席。直接出馬を終えると、夕方とんぼ返りで高知へ戻った。この強行軍に「糸井欲しさ」の熱意が詰まっている。

 「どうしても欲しい選手。1日練習を休むことになりましたけど、それぐらいの思いがあるということ。自分が35歳の時と比べても、おそらく彼の方が断然若くて強いんじゃないかな。35歳にして50盗塁以上の数字を残せる。打率も安定して3割を計算できる。2桁本塁打も打って守備でも強肩ですし、選手として非の打ちどころがない。恋人以上に思っていますので」

 獲得調査の過程で年齢がネックとの声も上がったが、自身の阪神移籍も35歳。37歳にして打撃3部門でキャリアハイを達成したが、スーツに包まれた糸井の体つきを見て「自分以上」と確信した。

 「手応えとまではいかないけど、次もし機会あるなら、もっと強引に『星野式』でいく。実はきょうも『星野式』でいきました。熱く、熱く訴えました。彼が迷っているようであれば、何度でも会いたいと思います」

 闘将金本が「恋人以上」の戦力を何が何でも射止めてみせる。

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