能見G封新記録後に被弾…爪割れていた

 「巨人4‐2阪神」(16日、東京ド)

 痛恨の一発に、新記録もかすむ。二回まで無失点に抑えて、巨人戦連続イニング無失点を球団新記録の「37」に塗り替えた阪神だが、先発の能見篤史投手(33)が三回に逆転3ランを浴びて、今季初めて巨人に敗れた。第1打席で左手がしびれ、爪が割れるアクシデントも投球に影響した虎のエース。打線もわずか4安打2得点。この悔しさは、第2戦の勝利で晴らしてみせる。

 エースが4番の一発に沈んだ。歓声と悲鳴が入り交じる中、快音を残した打球はオレンジ色に染まった右翼スタンドへ。悠然とダイヤモンドを一周する阿部に目をくれず、能見は湧き立つ感情を押し殺し、静かにマウンドの土をならし続けた。

 2点リードで迎えた三回だ。先頭の長野に右越え二塁打、寺内に中前打を浴び、一、三塁のピンチを招いた。続く坂本は一邪飛に打ち取ったが、直後に悪夢が待っていた。クイックモーションで投じた直球を阿部に完璧に捉えられた。

 「甘いのは甘いので。タイミングを変えて投げたんですけどね」。能見は淡々と振り返ったが、二回の攻撃で左腕をアクシデントが襲っていた。2死から宮国の142キロ直球に反応し、投ゴロを放った際に左手がしびれていたのだ。

 二回の投球から左手を気にするしぐさを見せ、直球を捉えられる場面が増えた。「左手を気にしていたから。影響はなかったことはないと思う。本人は大丈夫と言っていたけど」と中西投手コーチ。和田監督も「立ち上がりは良かったんだけど、1打席目で詰まって、抑えがきかなかった」と、その影響を否定しなかった。

 さらに能見は左手の爪が割れていたことを明かした。「五回が終わったときに気づいたので。(左手の)影響はなかったですよ。(しびれは)二回だけだったので」。エースは一切言い訳をせず、前だけを向いた。

 だが重い歴史の扉はこじ開けた。二回までゼロに抑え、昨季最終戦からの5イニングを含めて、“伝統の一戦”で37イニング連続無失点の新記録を樹立。1リーグ時代の1947年から48年にかけての記録を更新した。

 初回を三者凡退に抑え、半世紀以上破られなかった記録にあっさり並んだ。続く二回には1死満塁のピンチを招いたが、大田を141キロの直球で三ゴロ、宮国も空振り三振で得点を与えなかった。ただ逆転敗戦の前では、新記録樹立も遠くへかすむ。

 先週完封した巨人相手に6回9安打4失点。「甲子園と東京ドームはまた違うので。(巨人との対戦は)これからも続くし、しっかりとね。シーズンは長いので」。ペナントレース序盤ながら首位をひた走る宿敵。同じ過ちは繰り返さない。虎のエースが必ずリベンジを果たす。

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