職場のエアコンが故障 室温が危険レベルなのに会社側はのらりくらりと修理を先延ばし 社員が熱中症になったら労災認定されますか?【社労士が解説】

残暑が続くなか、オフィスのエアコンが故障したり効かなくなったりして、室温が危険なレベルにまで達することがあります。しかし、設備修理の手配を先延ばしにされたり、適切な対策がないまま過酷な室内環境での業務を強いられたりするケースも少なくありません。

熱中症による体調不良や命に関わるリスクすら潜む中、壊れたエアコンを放置したまま働かせる会社側の姿勢に問題はないのでしょうか。法的な義務や責任の所在について、社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞きました。

■オフィスでエアコン故障…放置は危険

ーエアコンが壊れたまま過酷な室温で働かせるのは違法になりますか?

エアコンの故障を知りながら放置し、過酷な環境で働かせ続ける行為は労働安全衛生法違反となります。同法では事業主に対し、労働者が安全かつ健康に働ける適切な就業環境を整える義務を課しています。

設備が故障すること自体は不可抗力であっても、改善する余地があるのに放置することは不適切な管理とみなされます。万が一、熱中症で倒れる社員が出た場合は労働基準監督署から指導や是正勧告を受ける対象となり、会社の管理責任が厳しく問われます。

ー「室温28度」など、法律上の具体的な基準値はあるのでしょうか?

厳密な基準ではなく、作業内容や場所によって異なります。精密作業や激しい肉体労働など業務の性質に応じて求められる環境は変わるため、「28度を超えたから即違法」と一概に言えるわけではありません。

しかし、明らかに業務に支障が出るような過酷な室温を放置し、熱中症のリスクを高める状態であれば、数値にかかわらず安全配慮義務違反として問題視される可能性があります。

ーエアコン修理に時間がかかる場合、会社が取るべき代替措置とは?

エアコンはすぐ修理できないこともあるため、故障したこと自体で直ちに会社を責めることはできません。しかし、会社には迅速な代替措置を講じる義務があります。具体的には、扇風機や冷風機の緊急導入、業者の特急手配、涼しい別部屋への移動、あるいは在宅勤務(テレワーク)への切り替えなどです。

こうした利用可能な代替策を一切取ることなく「そのまま我慢して働け」と放置することは、会社の安全配慮義務を怠っていると判断されます。

ー社員が熱中症になった場合、会社は損害賠償責任を問われますか?

故障放置などの劣悪な環境で社員が熱中症を発症した場合、業務に起因するとして労災(労働災害)に認定されます。さらに、エアコン故障を知りながら放置していたなど会社側に重大な過失があれば、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われます。

とくに熱中症で重症化したり死亡したりするような最悪の事態になれば、遺族から多額の損害賠償を請求される事態に発展します。会社は事態を軽視せず即座に対応すべきです。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ) 社会保険労務士/こころ社労士事務所代表

大阪府茨木市を拠点に、就業規則の整備や評価制度の構築、障害者雇用や同一労働同一賃金への対応などを通じて、労使がともに豊かになる職場づくりを力強くサポート。ネットニュース監修や講演実績も豊富でありながら、SNSでは「#ラーメン社労士」として情報発信を行い、親しみやすさも兼ね備えた専門家として信頼を得ている。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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