「このままでは危ない」八百屋の店先に置かれたケージの中の子猫 2万円で引き取ったら…次々と明らかになった過酷な経緯
八百屋の店先に置かれたケージの中で、小さな子猫が鳴き続けていました。
「八百屋さんで子猫が2万円。。。」
そんな言葉とともにInstagramへ投稿された動画が、注目を集めています。
投稿したのは、「動物愛護秘密結社 しゃあ猫団」の団長として保護猫活動を行う、よりパパさん(@yori.papa)です。子猫は推定生後2カ月の男の子で、名前は「あおくん」。シャム系に見えますが、正確な猫種は分からないといいます。
■店先のケージで鳴いていた子猫
よりパパさんが八百屋を訪れたのは、7月7日のことでした。店先に置かれたケージの中で、あおくんがずっと鳴いていたため、気になって店の人に事情を尋ねたそうです。
よりパパさんは普段から保護猫活動をしているため、「里親を探しているのであれば、お手伝いしましょうか」と申し出ました。
よりパパさんによると、店側からは当初、「子猫を保護して動物病院へ連れて行き、レントゲンなどで合計7万円ほどかかった。その費用を負担してほしい」と説明されたといいます。
そこで、医療費の領収書の原本を受け取れるのであれば負担すると伝えましたが、「領収書はなくした」と言われたそうです。領収書がない状態では費用を支払うことが難しいと伝えると、「家族が猫アレルギーなので、このまま八百屋の店先で飼う」という趣旨の話があったといいます。
最終的には交渉の末、よりパパさんが2万円を支払い、あおくんを引き取りました。
■「このままでは危ない」引き取りを決めた理由
よりパパさんが心配したのは、あおくんが置かれていた環境でした。八百屋は車通りの多い道路に面しており、客が店先で子猫を抱くこともあったといいます。
「一歩飛び出せば、車にひかれてしまうような環境でした。これからますます暑くなるのに、熱風が来る吹きさらしの路面です。定休日にシャッターを下ろされたら、店内がサウナのようになってしまうと思いました」
暑さが厳しくなる時期でもあり、よりパパさんは「あおくんをそのままにしておけない」と感じたそうです。ところが、あおくんを引き取った後、動画を見た複数の人から連絡が寄せられ、八百屋へ来るまでの複雑な経緯が明らかになっていきました。
■最初に保護した人から届いた連絡
よりパパさんのもとには、最初にあおくんを保護したという、保護猫団体のミルクボランティアから連絡がありました。送られてきた写真などによると、その人は6月29日、駅近くの国道であおくんを保護したそうです。
その後、八百屋側から「この猫は、おばあちゃんが飼っていて探していた猫だ」と説明されたため、飼い主だと信じて引き渡したといいます。その際、相手が猫を入れる物を持っていなかったため、逃げないようにキャリーケースも貸したそうです。
しかし同じ日、SNS上にあおくんの里親を募集する投稿が出ていることに気付きました。写真には、貸したキャリーケースも写っていたといいます。驚いて八百屋側へ確認すると、「おばあちゃんの猫ではなかった」という趣旨の説明があったそうです。
ミルクボランティアは、自身が所属する保護団体の譲渡会で里親を探すことを提案しましたが、その後は連絡がつかなくなったと話しています。
■別の場所でも1週間預けられていた
さらに、別の人物からも「あおくんを預かっていた」と、写真付きの連絡が寄せられました。
その人の説明によると、八百屋側から子猫を預かったスナックの店主が、自分では十分に世話ができないため、来店客に「1週間だけ預かってほしい」と頼んだそうです。その人は7月5日まで自宅であおくんを預かり、八百屋の関係者に返したといいます。
そして7月7日、よりパパさんが八百屋を訪れ、あおくんを引き取ることになりました。
■元気そうに見えたものの「猫カビ」を発症
保護されたあおくんはその後、動物病院で初期医療を受けました。猫エイズウイルスと猫白血病ウイルスの検査はいずれも陰性。3種混合ワクチンの接種や、寄生虫などを予防する薬の処置も受けました。
一方で、皮膚糸状菌症、いわゆる「猫カビ」を発症していることが分かりました。
猫カビは、体力や免疫力が十分でない子猫などに発症することがある病気です。ほかの猫や人へ感染する可能性もあるため、現在は隔離しながら投薬治療を続けています。完治までには、1~2か月ほどかかる見込みだといいます。
「にゃーにゃー鳴いて元気そうに見えましたが、猫カビを発症するほど弱っていたんだなと思いました」
よりパパさんは、あおくんの小さな体に蓄積していた負担を思いやります。
■「ただ、目についた子を見捨てられなかった」
よりパパさんが保護猫活動を始めたきっかけは、引っ越し先の地域にいた猫たちでした。近所には猫へご飯を与える高齢女性がいる一方、猫を快く思わない住民もいたため、子猫を見つけると保護し、里親を探すようになったそうです。
現在、しゃあ猫団は動物愛護センターに、第二種動物取扱業の非営利譲渡団体として登録されています。
よりパパさん自身も愛玩動物飼養管理士の資格を取得し、町内会の地域猫活動や保護・譲渡活動に取り組んでいます。活動の様子はInstagramやYouTube、TikTokでも発信しており、少しずつ応援してくれる人も増えてきました。
今回の出来事を通じて伝えたいことを尋ねると、よりパパさんは、決して自分を大きく見せようとはしませんでした。
「僕には、世界の猫や日本中の猫をどうにかできるような力もお金もありません。ただ、目についた子を見捨てられなかっただけです」
そして、こう続けます。
「猫を助けられたことがうれしい。フォロワーさんに『よくやった』と褒めてもらえたこともうれしい。これは、ただ僕がうれしかっただけの話です」
大げさな使命感ではなく、目の前にいた小さな命を放っておけなかった…あおくんは現在、よりパパさんのもとで治療を受けながら、回復の日を待っています。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)
