「加害が許される治外法権の場所」「看護師だって一人の人間」 認知症患者からのハラスメント、医療・介護職員の4人に1人が「ほぼ毎日」

顧客や取引先からの立場を利用した理不尽な要求や悪質なクレーム、いわゆるカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が社会的問題となっています。医療・介護現場のコミュニケーション環境の改善に取り組む株式会社ケアコム(東京都調布市)が実施した「認知症患者からのカスハラ」に関する実態調査によると、約4人に1人が「ほぼ毎日」の頻度でカスハラを受けていることが分かりました。

調査は、看護師・准看護師の資格を保有する男女255人を対象として、2025年11月~2026年1月の期間にインターネットで実施されました。

調査の結果、認知症患者からのハラスメントを経験した看護師のうち、半数以上が「ほぼ毎日」(26.9%)または「週に数回」(27.7%)という高頻度で被害にあっていることが分かりました。

具体的な内容としては、「暴力」(88.2%)、「暴言」(83.2%)、「セクシャルハラスメント」(56.7%)といった回答が上位に挙がり、単なる一時的な混乱ではなく、特定の職員に対して執拗に繰り返される身体的・精神的な攻撃が常態化していることが明らかになりました。

続けて、「被害による自身への影響」を尋ねたところ、回答者全員(100%)が「精神的ストレス」を挙げたほか、半数以上が「通院や処置を要する実害(身体的負傷)」(52.5%)を経験しており、「痛みや痕が残る実害があっても、記録に残すことしかできない」という無力感が「職務意欲の低下」(62.2%)を招き、離職する決定的な要因となっていることが示唆されました。

また、被害を受けた際、「何も行動しなかった」(28.6%)とした人が3割近くにのぼり、その理由として「認知症だから仕方ない」(85.3%)が多くを占めました。

他方、「上司に報告しても、逆に関わり方の不備を指摘されると思った(二次被害)」(20.6%)という意見も見られ、組織が職員を守るのではなく、職員の「忍耐」に依存して現場を維持している実態が浮き彫りになりました。

最後に、現場看護師の葛藤と深刻な現状について自由記述で答えてもらったところ、以下のようなコメントが集まりました。

▽病院の外なら警察沙汰になるような暴力も、病院内では「病気による症状」の一言で片付けられる。加害が許される治外法権の場所になっている(30代・病院勤務)

▽「認知症だから何を言ってもいい、何をしてもいい」というわけではないはず。看護師だって一人の人間であり、心も体も傷つく。そこを見逃さないでほしい(40代・訪問看護)

▽上司に暴力を相談しても「あなたの声がけや態度が、患者さんを興奮させたのでは?」と、まるで被害者に非があるように扱われるのが一番つらい(30代・クリニック)

▽管理者は現場で対応していないから、事の重大さを理解しようとしない。単なる「面倒なインシデント」として処理されることに絶望を感じる(40代・介護施設)

▽医師は被害に遭わないからか、内服調整や転院検討に消極的。すべてはナースが我慢すれば済むと思われている(50代・病院勤務)

▽抑制(拘束)は悪だと教育されるが、抑制しなければ看護師の身が守れない。命に関わる点滴を抜去しようとする患者を止めれば殴られる。どうすれば正解なのか誰も教えてくれない(20代・病院勤務)

▽「この人のために」という奉仕の心を利用して、ハラスメントを我慢させることが今の看護現場のスタンダード。これでは若いスタッフは、すぐに辞めてしまう(50代・病院勤務)

▽家族は病院に預けっぱなしで、面会にも来ない。それなのに何かあれば恫喝してくる。医療従事者への敬意が全く感じられない(40代・病院勤務)

   ◇   ◇

調査を実施した同社は、「現場の看護師たちが求めているのは、個人の努力を責めることではなく、発生した事象をチームや組織、そして社会全体で共有し、ともに解決策を模索する環境です」と述べています。

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