「天才」に挑み続ける美大生…努力すればするほど周りとの才能の差を痛感するばかり 「負けたくない」彼女が見つけた答え【漫画】

どんなに努力しても届かないと思い、落ち込んでしまう経験は誰もが一度は体験しているのではないでしょうか。美大を舞台に描いた作品『天才コンプレックス』(作:禾屋眺さん)は、そんな才能と努力の差に向き合う若者たちの姿を丁寧に描いています。

物語は「美術をやる上で避けては通れないものが講評である」という言葉から始まります。講評とは、自身の作品を大勢の前で教員から評価される場のことです。

主人公の張本有紀音は、この時間が大嫌いです。講評のたびに厳しい指摘を受ける有紀音と対照的に、同級生の長壁現は常に高い評価を得る存在です。同じ時期に予備校へ通い始めた2人は何かと比べられ、有紀音は強い劣等感を抱くようになります。

推薦入試に落ちた経験も重なり、有紀音は「誰よりも上手くなりたい」という思いで制作に没頭します。題材に選んだのは、雨上がりの歩道橋の階段。見慣れた景色が、その瞬間だけは震えるほど美しく映り、「描きたい」という衝動に突き動かされます。

しかし展示会前日、担当教員からパースや色合いについて厳しい指摘を受け、皆の前で「酷い」と評されてしまいます。自己否定に沈む有紀音に、長壁は有紀音の絵が好きだと必死に伝えますが、有紀音の心には届きません。有紀音は「描かなきゃよかった」と自分を責めながらも、「こんな素敵な世界、描かなきゃ!」と思う気持ちを捨てきれず、その狭間で葛藤します。

しかし翌日の展示会で、来場した老女が有紀音の作品について「あなたの目にはこう映っていたんでしょう?」「こんな素敵な絵、世界中であなたしか描けないわ」と語りかけます。この言葉にこらえきれず涙を流した有紀音は、最後のシーンでは「描くのだ。私にしか描けない絵を」と、覚悟を感じる言葉で物語は締めくくられます。

読者からは「読んでる途中から涙が止まりませんでした」や「勇気ももらいました」などの声があがっています。そんな同作について、作者の禾屋眺さんに話を聞きました。

■本当に本当に嬉しくて、あの頃の私がそれで救われた

-同作を描くきっかけがあれば教えてください。

大学2年生の頃、頑張ったつもりだったのに完成したら先生にボロボロに言われる……というまさしく主人公・有紀音と同じ状況に陥ったのですが、あまりにも悲しすぎて友達に相談した時に、みんな口を揃えて「分かる!」と言ってくれたので、これはきっとみんなと共有できる感情なのだ、と思いました。

さらにその後、作中終盤に出てくる老女のように、私の友達が「禾屋が絵にしなければ、あの風景はただ通り過ぎる場所になっていた。初めてその場所が綺麗だと思った」と言ってくれました。お世辞かもしれないですが、本当に本当に嬉しくて、あの頃の私がそれで救われたことで、漫画にしようと決意しました。

-作品制作で大切にされているテーマなどありますか。

「人の心を動かす漫画を描く」をモットーに描き続けています。私自身、幼少期から漫画を読むことで、冒険のワクワク感、物語の感動で救われてきました。私もそのような漫画家になりたい、と思っています。

-現在どのような活動をされていますか。

現在は賞レースでの受賞やデビューに向け、担当さんと試行錯誤しながら漫画を描いています。pixivや電子書籍での発表も行っています。まだまだ未熟ですが、いつかデビューして、誰かの心を救う漫画を描けたらと思っております!

(海川 まこと/漫画収集家)

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