【ばけばけ】トキ懐妊で浮き彫りになるヘブンとの関係性 それを受ける池脇千鶴の演技が別次元「直前までアホみたいな話をしていたのに」
連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)、今週は第22週「アタラシ、ノ、ジンセイ。」が放送中。トキ(髙石あかり)は、ヘブン(トミー・バストウ)が新たな紀行文のために単身フィリピン行きを考えているとラン(蓮佛美沙子)から聞かされ、ショックを受ける。そんな中、第一子を授かったことがわかる。ヒロインの妊娠・出産、そして周囲の人々の反応は、これまでの朝ドラで何度も描かれ続けてきたエピソードだが、やはり『ばけばけ』は一味違った。
「つわりが始まって、吐き気でえずく」というような、よくある描写ではなく、トキの妊娠初期の描写は「とにかく眠い」「めまいがする」というものだった。このことは前の第21週の終わりからすでに描かれていて、一旦はイセ(芋生悠)の“呪い”をトキが引き受たせい? と思わせるフェイントになっていた。
3月4日に放送された第108回で、トキは病院で医師・黒田(安井順平)から妊娠を告げられた。この告知シーンもまた『ばけばけ』らしい。「もう、お分かりですよね」と「もう言わんでよかね。おめでとうございます」という黒田の言葉の間に、トキが何度も「待ってごしなさい」と逡巡する。このシーンから、トキは薄々というか、ほぼ妊娠に気づいていた、しかしそれがはっきりするのが怖かったのだと察せられる。
■トキの懐妊を知るフミ『ばけばけ』ならではの描写
「ヒロインが家族に妊娠を打ち明ける」。これもさまざまな朝ドラで描かれてきたシーンだが、『ばけばけ』では、それを受ける母・フミ(池脇千鶴)の芝居が白眉だった。
物語序盤から描かれてきた、実の子を授からなかった司之介(岡部たかし)とフミの間にトキが養子としてもらわれてきたことにまつわる、それぞれの人物のさまざまな思い。ラシャメンになるのを覚悟で女中になることを決意したトキが、ヘブンと惹かれ合い結ばれて、ここまできたこと。言葉で明言こそしないものの、それをずっと見守ってきたフミだからこその「感慨ひとしお」が、第108回のこのシーンには宿っていた。
■描きたいのは「関係性」108回はもうひとつのクライマックス
このシーンに込めた思いと、池脇千鶴の演技について、制作統括の橋爪國臣さんに聞いた。
「子どもを授かる喜びを描くことはもちろんなのですが、この週のいちばんのテーマは、ヘブンのフィリピン行きの話とトキの妊娠を通じて浮かび上がる『ふたりの関係性』です。トキはヘブンにちゃんと『カク、ノ、ヒト。』(前の第21週の週タイトル)になってほしいと思っているし、もちろんヘブンもそのつもりです。そんな中で子を授かったと知ったとき、果たしてふたりはどういう行動に出るのか。第108回の、トキが家族に打ち明けるシーンは、第22週に2つあるうちの、ひとつのクライマックスとして作りました」
「孫ができると知らされて、司之介は単純に『嬉しい』と喜ぶシーンになっていますが、フミだけは、トキのもう少し深いところの気持ちを読めている。トキが『ヘブンさんには言わんでおこう思う』と言ったとき、その思いを瞬時に察して、一緒に悩みを共有する。台詞で言わなくてもそれが伝わる、心に刺さるシーンでした。やっぱり母親だなあと思いますし、池脇さんと髙石さんのお芝居も相まって、重要な意味を持つシーンになっていました」
■直前までアホな話をしていても、バッと切り替わる「本当にプロ」
娘・トキの思いを受けて、そのたびに変わる池脇の表情と声色に引き込まれた。橋爪さんは各所の取材で、「フミが松野家のアンカー」「池脇さんがいるから松野家が成立している」とたびたび語ってきた。その評価通り、俳優・池脇千鶴の凄みを見せつけられた108回の「トキの打ち明け」シーン。撮影前後の池脇の様子についても聞いた。
「感心するのが、池脇さんの切り替えの素晴らしさ。直前まで笑いながらどうでもいい雑談をしていても、カメラが回った途端、人が変わったようにバッと切り替わるんですよ。重いシーンの撮影であればあるほど、直前ではみんなとアホみたいな(笑)話をしていることが多いんです。本当にプロですよね」
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明日放送される第109回、トキはこのままヘブンに打ち明けないでいるのだろうかーー。
(まいどなニュース特約・佐野 華英)




