三笘薫は三“苫”薫ではありません ルーツである福岡市東区の地名は「三苫」なのに…名字が転じて「三笘」になった理由に迫る

東京五輪やカタールW杯の日本代表で、現在はイングランドのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCで活躍しているサッカーの三笘薫選手の存在によってすっかり有名になった「三笘」という名字。多くの人にとっては三笘選手で初めて見た名字だったのではないだろうか。

そもそもこの「笘」(竹冠)という漢字も、北海道苫小牧市の「苫」(こちらは草冠)とは違い、見慣れない漢字である。往年のプロ野球選手、笘篠兄弟で見たことがあるという人がいるくらいではないか。

実は「三笘」という名字は、「三苫」から漢字が変化したものである。

江戸時代以前は、分家したり、別の地域に移り住んだりした際に、名字の漢字や読み方を少しだけ変えるというのはごく一般的に行われていた。これは、同じ一族ではあるが、本家や宗家とは違うという意味合いである。

「苫」を「笘」に変えても発音は同じ「みとま」なので、日常生活では同じ一族と認識される。さらに「苫」と「笘」は見た目も似ており、漢字で書いても同族だろうということは類推できる。

では、元になった「三苫」のルーツは何かというと、福岡市東区にある「三苫」という地名である。

ここをルーツとして「三苫」という名字が生まれ、そこから分家した一族が「三笘」を名乗ったものだろう。

現在、「三苫」は福岡市西区と糸島市に集中しており、大分県日田市にもある。一方「三笘」は日田市に最も多く、福岡県で生まれた「三苫」が、日田に転じて次第に「三笘」に転じたことがわかる。三笘薫選手も祖父母は日田市出身とのこと。

因みに「苫(とま)」とは菅(すげ)や茅を編んで、小屋の屋根や船の上部などの覆いとして使用したもののこと。一方「笘」は音読みが「セン」と「チョウ」、訓読みは「ふだ」「むち」で、「とま」という読み方はない。つまり、「苫」と「笘」は似ているだけで意味が違う別の漢字である。

しかし、「さいとう」という名字は「斎藤」と「斉藤」の両方多いが、本来「斉」は「せい」と読む別の漢字で「さい」とは読まないにも関わらず広く「斉藤(さいとう)」として使用されているように、名字では似ている漢字で代用することは多い。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら研究を続ける。2017年から5年間NHK「日本人のおなまえっ!」のコメンテーターを務めた。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。

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