夫が妻に「赤ちゃんの世話を大変でしょう」と同情したのに→機嫌が悪いまま! 2年前に夫婦関係に変化、夫はどうすれば?
看護師、僧侶、スピリチュアルケア師、ケアマネージャー、看護教員の玉置妙憂さんの相談室。今回は、妻を気遣っているつもりなのに、なぜか妻を怒らせてしまう30代の男性からの相談。「今の妻」に向き合うことを前提として、「人が語ることをやめる3つの理由」から、なぜ妻が冷たい対応をとるのかを、玉置さんが相談者に問いかけます。
■【相談】妻を気遣う言葉をかけても突き放される
結婚7年目の38歳です。新婚当初は互いを思いやり、理解し合えていると思っていました。休日は一緒に出かけたり、夜は仕事の愚痴を言い合ったり、そんな何気ない時間が心地よかったんです。
2年前に長女が生まれてから、少しずつですが会話が噛み合わなくなってきました。育児と仕事の両立で妻の疲れも溜まっているのは分かります。でも「赤ちゃんの世話は大変でしょう?」と声をかけても、「あなたは何もしてくれないくせに」と返されることも。確かに平日は遅くまで仕事で、休日も急な呼び出しがあったりして、育児への協力は十分とは言えません。
それでも、妻の機嫌が悪い時は心配になって「何かあった?」と聞くようにしています。ただ、たいてい「察してよ」「自分で考えなさいよ」と突き放されてしまう。昔は「疲れてるんでしょ?」と肩をもんであげれば喜んでくれたのに、今は「それどころじゃない」と冷たく言われます。
職場では部下を持つ中間管理職として、メンバーの様子を見ながら適切な指示を出すことには自信があります。なのに、最愛の妻の気持ちが読めないというのは、本当に情けないです。このままズルズルと夫婦の絆が薄れていくのが怖くて、不安で胸が締め付けられます。
■【玉置さんの回答】「何かあった?」って、何かあるのは当たりまえ
さぞ重苦しい日々でしょうね。悶々としたお気持ちが伝わってきました。同時に、いくつか浮かんできたことがありましたので、まずはそれをお伝えしますね。
ひとつは、この世の中には同じ状態であり続けるものはないという真理です。物質にしても生物にしても、そして人間関係にしても、そう。すべては移り変わってゆくのです。だから、新婚当初と違う、子どもができてから違う、というのは当たりまえ。
まずは「前はこんなじゃなかったのに」という思考回路を破棄してください。そうじゃないと、いつまでも「今」に向かい合えないことになります。そのあたりを奥さんは察して、イラついていらっしゃるのかもしれませんよ。現実を見ていないってね。
ふたつは、言葉にするのって大変だってことです。私たちはそれぞれに多くの体験をします。その体験を人と共有するためには、言語化しなければなりません。でもその言語化がそう簡単ではないのです。
むずかしい理由は3つ。
①その体験を表現する言葉がない。今でこそ、セクハラだパワハラだという言葉があって容易に語られていますが、昔はそんな言葉はありませんでした。もちろん当時にだって、今で言うセクハラやパワハラはあったんですよ。でも言葉そのものがなかったから、それを体験した人が自分以外の人に説明することが難しかったんです。
②その体験をした人に語るパワーがない。体験を言語化するための言葉は存在しています。でも、体験した本人に語るパワーがないのです。語彙力、会話力、気力などなど、本人がパワーレスなので語ることができません。
③聞く側にきちんと聞く耳がない。体験している人が適切な言葉を使ってどんなに上手に説明しても、聞く側がそれを理解できない状態です。例えば、こどもが「学校に行きたくない」と言ってきたときに、「みんな学校に行ってるじゃない」と返すような会話です。ぜんぜん子供の話を聞こうとしていないでしょう?聞く側の能力不足ですね。
この3つの理由で、人は語らなくなります。「何かあった?」と聞いても話してくれない妻さんの場合、どの状況に当てはまりそうですか?
そもそも、あなたが「職場では部下を持つ中間管理職として、メンバーの様子を見ながら適切な指示を出すことには自信があります。なのに、最愛の妻の気持ちが読めない」と言っていらっしゃること自体が危ういですよ。
なぜ家庭の、しかも夫婦という人間関係を考えるときに、会社での仕事っぷりのことを持ち出してくるんでしょう。しかも「自信がある」だなんて。なんというかなあ、自己防衛?上から目線?う~ん、現実逃避かもしれませんね。そのあたりの匂いが、もしかしたら妻さんに伝わっちゃっているのかもしれませんよ。
「何かあった?」って、あるのは当たり前です。だって、子育てしているんだもん。まるで部外者みたいに。ふざけたことを言っている場合じゃありません。仕事の職場では適切な指示を出すことができるあなたですから、必ずできるはずですよ。よく見てください。妻さんが何をしたいのか。
そして、なにが滞っているのか。それをよく観察して、黙って先手をとって動くんですよ。なあに、些細なことで大丈夫です。掃除機の動線にある椅子をちょいとどけるとか。さくっと子どもを公園に連れ出して妻さん一人の時間を30分でいいからつくってあげるとか。
そんなもんでOKです。肩もみなんかよりも、ずっと気持ちが伝わります。不安で胸が締めつけられるなんて言ってないで、即、動いてください。
◆玉置妙憂(たまおき・みょうゆう)
看護師。僧侶。二児の母。専修大学法学部卒業後、法律事務所で働く。長男が重度のアレルギーがあることがわかり、「息子専属の看護師になろう」と決意し、看護学校で学ぶ。看護師、看護教員の免許を取得。夫のがんが再発。夫は、「がんを積極的に治療しない」方針をかため、自宅での介護生活をスタートする。延命治療を望まなかったため、自宅で夫を看取るが、この際にどうしても、科学だけでは解決できない問題があることに気づく。夫の“自然死”という死にざまがあまりに美しかったことから開眼し出家。高野山にて修行をつみ高野山真言宗僧侶となる。その後、現役の看護師としてクリニックに勤めるかたわら、患者本人、家族、医療と介護に携わる方々の橋渡しとして、人の心を穏やかにするべく、スピリチュアルケアの活動を続ける。訪問スピリチュアルケアを通して、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)とQOD(クオリティ・オブ・デス)の向上に努める。非営利一般社団法人「大慈学苑」をつくり、代表を務める。課題解決型マッチングメディア「リコ活」でコラムを執筆。
◇ ◇
「リコ活」は、夫婦問題の課題解決型メディアです。夫婦関係のトラブルや離婚で悩む人に、専門家とのマッチングの場を提供するとともに、家族のカタチが多様化する時代にあわせた最新情報を発信しています。
▽離婚、夫婦問題の課題解決型メディア「リコ活」
https://ricokatsu.com/
(まいどなニュース/リコ活)





