東京都23区内の火葬場…9カ所のうち、7カ所は民間運営 「なぜ公営が少ないの?」運営会社が語る理由

人生の終わりに、誰もがお世話になる火葬場。東京都23区内には9カ所の火葬場がある。火葬場の運営主体は原則として地方公共団体だが、都内では7カ所の火葬場が民営である。うち6カ所を大正時代から運営する東京博善株式会社に、その背景を聞いた。

■東京都23区内の公営火葬場は2カ所のみ

火葬場とは「火葬炉」を備え、葬儀の儀式のひとつ「火葬」を行うための施設だ。また、葬儀場とは、文字通り葬儀を行うための施設であって、役割も機能も火葬場とは異なる。

さて、ご遺体を火葬する火葬場は、原則として地方公共団体が運営、すなわち公営とされている。だが、東京都23区内に9カ所ある火葬場のうち公営の火葬場は、大田区にある「臨海斎場」と江戸川区にある「瑞江葬儀所」の2カ所しかない。ほか7カ所は民間企業によって運営されている、民営火葬場なのだ。

民営の火葬場は、町屋斎場(荒川区)、落合斎場(新宿区)、代々幡斎場(渋谷区)、四ツ木斎場(葛飾区)、桐ヶ谷斎場(品川区)、堀ノ内斎場(杉並区)、戸田葬祭場(板橋区)の7カ所で、うち戸田葬祭場を除く6カ所を東京博善株式会社が運営している。ちなみに「斎場」とは、一般的に火葬場を併設した葬儀場のことを指し、近年ではセレモニーホールと呼ばれることもある。

同社の広報に聞いた。

「火葬場の運営は1948年に制定された法律『墓地・埋葬等に関する法律』によって定められており、経営主体は原則として地方公共団体です。それが難しい場合であっても、公益法人か宗教法人であることとされています。弊社が有する火葬場は江戸時代から整備されてきた歴史があり、都内においてはこの法律が施行される前の大正10年より弊社が運営していたことから、現在6カ所の火葬場を運営しております」

参考までに余談ながら、大都市における公営火葬場数は大阪市が5カ所、横浜市が4カ所だそうだ。

■東京都23区の約7割の火葬を取り扱っている民営斎場

公営の火葬場と民営の火葬場との、いちばんの違いは何だろう。気になるのは、やはり火葬料金だ。

「火葬料金については、公営で設定されている対象区域外料金を参考に設定しております」

たとえば大田区にある臨海斎場だと、対象となる区の住民(大田区、港区、品川区、目黒区、世田谷区)は44000円、それ以外の区の住民は88000円に設定されている。これに対し同社の料金は、87200円とのこと。

また、火葬してもらうにあたっては火葬場に予約が必要なのだが、どちらが予約を取りやすいということはないらしい。

「お昼付近の時間帯のご予約が重なり、予約が取りにくい場合があります。また、弊社の火葬場は東京都の許認可事業のため、特定の葬儀社を優遇するような公益性を欠いた運用も行えません」

同社は東京23区の、約7割の火葬を取り扱っているという。火葬炉は火葬時間が40分程度と短いことが特徴のロストル式を採用しているため、遺族の待ち時間が大幅に軽減されるそうだ。一般的な「台車式」と呼ばれる火葬炉では、1時間近くかかるとのこと。

人はいつ亡くなるか分からないため、ときには火葬件数が重なることがあるらしい。そういうときは営業日や営業時間を拡大して、民間企業ならではの柔軟な運営を行うという。

東京都23区内に公営の火葬場が少ないのは、古くからすでに民営の火葬場が運営されていたことが背景にあることが分かった。

同社によると、施設内は快適で気品溢れる贅沢な空間となっており、「人生最後の大礼にふさわしい場の提供に努めています」とのことだった。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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