保護犬の譲渡活動を通じて、「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン（以下、ピースワンコ）。多くのワンコを保護し続けていますが、中には重度の障害や持病があるワンコもおり、こういったワンコは残念なことに譲渡対象にならないこともあります。そういった譲渡が難しいワンコでも、同団体ではその命を大切に最期の日を迎えるまでケアし続けます。

これらの費用は同団体が実施している支援システム「ワンだふるファミリー」の一員となった多くの方々の支援によってまかなわれていますが、今回ご紹介するダンジェロも最期まで大切にケアされたワンコでした。

■飼い主に捨てられた高齢犬のシーズー、ダンジェロ

ダンジェロが同団体に保護されたのは2017年11月。飼い主に捨てられ、広島県動物愛護センターで殺処分対象になっていました。犬種はシーズーで、本来はクリンとした毛並みが可愛らしい、小型犬として人気のある犬種です。

しかし、保護時のダンジェロは推定15歳と、かなりの高齢犬だったことに加え、眼球突出の影響で全盲。心臓や胃にも持病を抱えていました。

スタッフが対面した当初は、かなりやせ細っており、その小さな体で相当な苦痛に耐えながら生きてきたのだろうと思われるような表情を浮かべていました。

スタッフはすぐ施設に連れて帰り獣医師に診てもらいましたが、その診断は「長くは持たないだろう」というものでした。

ここまで必死に生き抜いてきたダンジェロに対し、スタッフは今より少しでも楽で幸せな犬生をおくってもらえることを願い、苦痛から解放されるようなケアをすることに決めました。

■老犬を24時間体制で看取る「老犬ハウス」

ダンジェロを引き取ってからの約１年は、同団体の神石高原シェルターの大自然のもとで、多くの仲間ワンコたちと一緒に過ごしてもらいつつ治療を続けました。それはダンジェロが少しずつゆっくりと元気を取り戻していくための貴重な時間となったのではないかと思われます。

その後、ダンジェロは同団体の「老犬ハウス」で暮らすことになりました。「老犬ハウス」とは病気のある老犬を看取る施設で、病状の重いワンコや、いくつもの病気を併発しているワンコなど、手厚いお世話が必要なワンコたちが暮らす施設です。

高齢で持病を抱えているために日々の体調管理が難しく、寝たきりになってしまったり、酸素吸入器などの医療機器が必要であったりと、それぞれの状態に合わせてケアができるような設備が整った施設です。

「老犬ハウス」では、24時間体制でスタッフと獣医師が連携しながら、ここで暮らすワンコたちのお世話をします。

■ ダンジェロは他のワンコからの信頼が厚かった

高齢犬のダンジェロですが、ふとした際に見せる表情は、まるで上品な老紳士のごとく貫禄がありました。人から体を触られることを嫌がる一方、他のワンコからの人気は抜群で、どんなワンコが寄り添ってきても受け入れていました。仮に、他のワンコとの接触が苦手なワンコでも、ダンジェロにだけは何故か寄り添ってしまうような不思議な魅力があるようでした。スタッフの目には「本来のダンジェロはとても心優しく、マイペースで穏やかなおじいちゃんだ」と、他のワンコたちが察し寄り添っているように映りました。

高齢と持病のせいで、確かに他のワンコよりは体力的な鈍さはあるものの、このように人気者だったダンジェロは、体調の良いときには、「老犬ハウス」の周辺を散歩します。ときには「散歩に行こう！」と言っているかのように、スタッフたちにアピールしてくることもありました。

他方、眼球突出による全盲のケアとして１日に10回ほどの目薬をさし、4種類の心臓の薬の投薬をするなど、過酷な治療も続ける日々をおくっていました

■スヤスヤと眠り、虹の橋へと旅立った

ダンジェロの生き抜こうとする姿に、日々勇気づけられるスタッフ。少しでも楽に、そして1日でも長く生きてほしいと願い、懸命にケアをし治療を行いました。

しかし、同団体に引き取られて5年目に入った2022年の冬、ダンジェロはその命をまっとうしスヤスヤと眠りにつき、虹の橋を渡りました。

スタッフは、今もダンジェロの懸命に生き抜いた姿、そして、他のワンコたちからの信頼が厚かった姿を思い出すと目頭が熱くなると言います。ただし、ダンジェロが虹の橋を渡ったこの日まで長きにわたって他のワンコたちと過ごせたのは、他でもないスタッフ、そして「ワンだふるファミリー」の支援者の方々のおかげだったとも思います。

ダンジェロとの思い出を胸に残しながらも、今後も同団体では1頭でも多くの命を救い、そしてそのサポートを続けます。これからもその活動に注目していきたいと思います。

（まいどなニュース特約・松田 義人）