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SNSで何度もバズる「白杖SOSシグナル」視覚障害の当事者たちは実際どう思っている? 実は全国共通ルールではないらしい

視覚障害者が外出先で困ったことがあった時、白杖を頭上に掲げて周囲にサポートを求める「白杖SOSシグナル」という合図があります。40年以上前に福岡県盲人協会が「白杖シグナル」として提唱し、趣旨に共鳴した岐阜市が2015年3月に公募で「白杖SOSシグナル」のシンボルマークを制定。岐阜市や岐阜県視覚障害者福祉協会などが中心となって全国的な普及を目指して啓発に取り組んでおり、内閣府のサイトでもこのマークが紹介されています。実はこのシグナル、ここ何年もSNSで繰り返しバズっている定番ネタのひとつ。毎回「知らなかった」「大事なことですね」などの善意の声とともに拡散され、実際にサポートにつながったケースもある一方で、当の視覚障害者や支援者の間では否定的な見方も根強いことで知られています。一体どういうことなのでしょうか。

■盲学校でも教えていない

以前取材したことのある横浜市立盲特別支援学校に聞いてみました。

長尾一(はじめ)校長は「シグナルの存在自体はもちろん知っていますが、生徒たちに教えたことや、教員と共有したことはありません。この仕事をしていても、シグナルを使う人に遭遇したことは一度もないですね」ときっぱり。当事者である生徒の間でも「聞いたことはあるけどやらない」との声が大半だといい、「弱視だけどそもそも白杖を使っていない」「わざわざ白杖を掲げなくても声を掛けてもらえる」など、理由は人それぞれのようです。ネット上では「地面から白杖を離すのは危険を伴う」「ポーズに抵抗がある」といった当事者の意見も散見されます。

自身も視覚障害がある同校の男性教員は「私も困ったことがあればあのポーズをするのではなく、自分から声を掛けます。仮にサインを出すとしても、白杖ではなく片手を挙げたりする方が自然かな」との考え。とはいえ、「シグナルのことが話題になるのは、視覚障害や白杖に関心を持ってもらうきっかけになるので個人的には歓迎したい」と、ある程度は前向きに受け止めているそうです。一方で「当然ですが、『シグナルを出していない=困っていない』ではありません」と強調。「シグナルにせよ、声を掛けるにせよ、周囲への迷惑を考えてなかなか助けを求められない当事者がいることも知っていただけたらありがたいです」

■地域によっても温度差?「全国共通ルールではない」

では当サイトの地元・神戸市ではどうでしょうか。

訓練などを通じて視覚障害者の自立と社会参加を支援している神戸視力障害センターの職員は「正直、『中には知っている人もいる』という程度だと思います。当事者の間でもそこまで広く共有されていないのでは」。シグナルが使われるケースも「ほとんどない」というのが実情だといいます。

兵庫県視覚障害者福祉協会にも取材してみましたが、やはり「全国共通のルールと言えるほどは浸透していません」との見解。「ましてや見えている人の間での認知度はさらに低いでしょう。外出先で白杖を掲げても『あの人、何してんねんやろ』と思われかねないのであれば、誰でも躊躇します。そうでなくても、視覚障害者は周囲にヘルプを求めることに対して、ものすごく気を使う人が多い。シグナルの有無に関係なく、『何かお困りじゃないですか』と声を掛けてもらえるのが一番ありがたいです」(担当者)

どの取材先も「視覚障害に関心を持ってもらえるのはありがたい」とは口にしつつも、シグナルとは微妙な距離感があり、決して自分たちで広めようとはしていない様子なのが印象的でした。ちなみに「障害者に関するマーク」を紹介する内閣府のサイトでは、「駅のホームや路上などで視覚に障害のある人が危険に遭遇しそうな場合は、白杖によりSOSのシグナルを示していなくても、声をかけてサポートをしてください」と書かれています。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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