ボランティア歴20年以上の保護活動家、念願の犬猫保護シェルターを開設「私が倒れても、仲間に“活動”を託したい」乳がん再発のリスク背負い活動

山口県長門市内で20年以上にわたり犬猫の保護活動をしているNPO法人「ちびたまのしっぽ愛護会」代表の山下未愛(みのり)さん。主に地元の保健所から引き出した犬猫の里親探しに取り組み、これまで里親に出した犬猫は約2300匹に上るというベテランボランティアです。2020年6月にご自身の乳がんが発覚してから進めてきた保護犬・保護猫の居場所となるシェルターをこのほど開設。保護犬シェルターが昨年9月から、保護猫シェルターは今年4月から活動をスタートしています。 

今後の運営について、山下さんは「当初はがんの摘出手術を受けたものの、悪性のがんのため転移や再発率が高かったため、私が動けない、あるいはいなくなっても自分の活動を仲間のボランティアにそのまま引き継げるよう保護シェルターの建設を目指していました。今のところ転移再発はみられないもののリスクはゼロではないため、いずれ世代交代は常に頭に置いている状況です。なので、一緒に活動するスタッフにも、シェルター運営について学んでもらえたらと思っています」と話しています。 

■保護活動ができなくなったときに備え、保護シェルターの建設へ クラファン1カ月で支援金約1500万円集まる

2020年6月に乳がんが分かり、同年8月に手術を受けた山下さん。右の乳房とがんが転移したリンパも全て摘出したといいます。9月には本業の仕事に復帰し、翌月の10月から抗がん剤治療を始めたものの、副作用で体調を崩してダウン。そんな寝たきりの状態のときに地元の長門健康福祉センター(以下、長門保健所)から「犬が収容された」と山下さんの元に連絡が入りました。「寝ている場合ではない」と思い立ち、抗がん剤治療を中断して収容された犬を保護するために保健所に出向き、保護活動を再開したそうです。

とはいえ、がんの転移や再発の恐れがあり、保護活動ができなくなったときのことを考えて自身の活動を仲間のボランティアに引き継げるよう保護シェルターの建設に奔走。がんの摘出手術を受けた2020年8月からシェルター建設に向けてクラウドファンディングを始め、1カ月ほどで約1500万円の支援金が集まり、今回保護犬・保護猫シェルター開設にこぎつけました。

「皆さんのご支援もあり、念願の2つのシェルターをつくることができました。きっかけは私のがん発覚ではありましたが、その発覚から今年6月で丸2年になります。病院で定期検査を受けており、転移や再発はみられません。私のがんは2年乗り切れれば7割、8割方乗り越えたと考えていいようで・・・転移や再発のリスクがゼロではないものの、少し希望の光が見えてきました。でも、体調はいつ変化するかわからないので、スタッフ誰もがシェルター内のこと、現場のことなどが任せられるように進めています」(山下さん)

現在「ちびたまのしっぽ愛護会」では、地元の長門保健所から引き出した犬猫の里親探しのほか、防府健康福祉センター(以下、防府保健所)からの子犬の保護や多頭飼育現場からの犬猫のレスキューなどにも取り組んでいます。保護犬・保護猫シェルターと一時預かり先の犬猫を合わせると、保護犬が約30匹、保護猫は約130匹受け入れているそうです。

     ◇   ◇

■シェルターでは…「心臓の奇形」と診断された犬や捨てられた子猫たちが暮らしている

同会の保護犬シェルター開設当初から暮らす姫ちゃん(推定1歳7カ月・雌)。2021年1月に防府保健所から引き出され、その翌月2月には下痢が続くなど体調を崩して病院に連れて行かれました。そこで獣医師から「心臓の奇形」と診断。当時「1週間もたないだろう。今何が起きてもおかしくない」と宣告されたといいます。

「姫ちゃんは余命を宣告されたものの、何とかここまで生きながらえています。初めは心臓の薬だけを飲んできましたが、甲状腺が悪いのも分かって。今は甲状腺の薬も飲み続けています。最近は後ろ足の関節にも奇形が出てきてしまい、お尻を引きずって歩いています。5月のゴールデンウィーク明けごろには体調を崩して食欲もなくなり、動くこともなく寝たきりになりましたが。それから2日間ほど入院して、今は持ち直して元気になっています。獣医師からも『こんなに生きるとは思わなかった』と驚かれており、今後も治療を続けながら少しでも長生きしてほしいです」(山下さん)

そんな闘病生活を送りながらたくましく生きる姫ちゃん。外に散歩に出掛けられないなど制限ある生活ではあるものの、他の犬たちが騒いでいる様子を楽しそうに眺めているとか。

一方、開設してはや1カ月経ったという保護猫シェルター。5月10日、長門保健所から引き取ったへその緒が付いた当時生後2日くらいの子猫4匹を受け入れました。子猫たちは捨てられていたといい、住民からの通報で警察に持ち込まれたあと、保健所へ送られてきたとのこと。しかし、シェルターへ来て1週間後、4匹のうち体の小さかった2匹が死んでしまいました。

「捨てられた子猫たち。へその緒が付いていて、目も開いていない状態で捨てるなんて非情です。私たちのところに来てから、へその緒も取れて、中でも小さかった2匹も小さいなりにミルクを一生懸命飲んでいたので、生きてくれるかと思っていましたが・・・日に日にミルクを飲む力が弱くなってしまって力尽きました」(山下さん)

生き残った2匹の子猫たち。死んでしまった子猫たちの分も頑張って元気にミルクを飲み続けているそうです。

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2つの保護シェルターを開設した山下さん。活動の支援を募っています。また保護猫シェルターは、2、3階が保護部屋で1階が2つの空き店舗になっており、譲渡会を開いたりしているとのこと。今後は、空き店舗の1つは譲渡対象の猫たちと触れ合える常設スペースにする予定。そのため、スタッフの増員を検討中で、無償で活動してくれるボランティアも募集しています。

(※シェルターの見学は受け付けておりません)

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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