岸田政権、不安抱える国民に強いメッセージなし…わくわく感のない自民党大会、懸念が見え隠れ

 第89回自民党大会が3月13日、都内のホテルで開かれた。岸田文雄総裁の下では初めての党大会だが、来年また岸田総裁の下で開かれるとは限らない。もっとも同日に行われた石川県知事選で馳浩元文科大臣が当選し、全面的に応援した自民党本部はなんとか面子を維持できた。これで7月の参議院選で大負けしなければ、岸田政権はしばらく続くことになるだろう。しかし懸念がないわけではない。

 これまでならオープニングからなんとなくワクワク感が醸し出された自民党党大会だが、今回はそれがない。しかも岸田総裁の演説の最中に、喉に異変が起こってしまった。演壇に水が届くまでの1分間、岸田総裁は苦しそうだった。もちろん岸田総裁の責任ではないが、演説が上手ではないという印象をさらに強めることになってしまった。

 「特別企画」では、2021年のパラリンピック競泳男子で3個のメダルを獲得した富田宇宙選手がスピーチした。また東京五輪の空手男子形で金メダルの喜友名諒、女子形で銀メダルの清水希容両選手も演武を披露。東京五輪が行われた昨年なら感動ひとしおだったはずだが、今年は違う。ロシアによるウクライナ侵略でインフレが加速する一方で、家計の所得が増えていない。深刻なスタグフレーションの到来すら囁かれ、人々はこれからの生活に怯えている。

 自民党は政権政党のはずなのに、時代の先を読んでいないといった印象だ。要するに不安を抱える国民に対する強いメッセージがない。

 そして大会が終わり、なんとなくモヤモヤした気持ちで会場から出てくる議員たちをロビーで待ち構えていると……。なんと姉妹デュオ「こまどり姉妹」を見つけてしまった!

 1938年2月生まれというから、現在84歳。ともに鮮やかな黒地の着物を着こなし、芸能人特有の華やかな光線を放っていた。しかしなぜ自民党大会に?と思い、パンフレットをたぐってみると、協力者のリストに「長内栄子 歌手」「長内敏子 歌手」と2人の実名が並んでいる。どうやら表彰されたらしい。

 それにしてもせっかく党大会に来た彼女たちを、なぜ壇上に上げなかったのか。終戦まで樺太で育ったという経歴は、北方領土を占有するロシアの脅威に対するアピールになったはず。極貧だった幼少期を経てNHK紅白歌合戦に出場まで実現したサクセスストーリーは、夢のない現在に生きる人々に元気を与えるに違いない。

 第二次世界大戦で敗戦した日本は、その後に奇跡の復興を遂げた。世界的なオイルショックをイノベーションで克服し、世界第2位の経済大国にまでのぼりつめた。それを主として支えたのは彼女たちのような戦前戦中世代で、そのたくましさには大いに学ぶべきものがあるはずだ。

 国歌斉唱で素晴らしい歌声を披露した歌手の城南海(きづき・みなみ)さんは平成元年生まれで昭和を知らない。前述した富田選手も喜友選手、清水選手ももちろん平成生まれ。だがいまの日本が必要なのは昭和のパワーではないか。

 そして昭和、平成、令和を生き抜くこまどり姉妹を党大会の壇上に上げることで、あの日本に活力があった時代を現在に繋げられたはずだ。

 アピールする格好の素材がすぐそばにあったにもかかわらず、みすみす逃した岸田執行部。岸田政権は3月14日に公表されたNHKの世論調査で支持率は安定の53%だったが、まさに運があるようでもツキがない。

(政治ジャーナリスト・安積 明子)

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