米国「ジョージ・フロイド事件」から1年 白人の元警察官ショービン被告が重刑を待つ「独房」のこと

 2020年5月25日、米ミネソタ州ミネアポリス近郊でアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが警察官数名に不適切に拘束され、殺害された事件から1年が経ちました。

 元ミネアポリス警察官のデレク・ショービン被告に膝で首を押さえつけられ「息ができない」と繰り返し訴えながら地面に横たわるフロイドさんの姿…。見ていられないほど心苦しくなるこの動画はたちまち炎上し、世界中で「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」のムーブメントが沸き起こりました。

 殺人罪などに問われた元警官で白人のショービン被告は全米が注目する中、地元検察は第2級殺人などの罪で有罪評決を受けた被告に禁錮30年を求刑しました。

 もちろん、これですべてが終わったわけではありません。現在、ショービン被告は今月25日に量刑が言い渡されるまで1日23時間、独房に監禁されているそうです。懲罰房とも呼ばれるこの「独房 (Solitary confinement)」とは一体どのような空間なのでしょうか。アメリカでは独房内での自殺がしばしば起こり、その後遺症も問題となっています。死をテーマのひとつとして絵本を創作している私にとっても気になるところでした。

 そんなとき、受刑者のためのワークショップや更生改善サポートをする非営利団体のボランティアを通じて知り合った元無期懲役囚のジョニー・ハウさんと独房などについて話をする機会に恵まれました。ジョニーさんは服役中に大学の学位を取得し、現在はアルコール&薬物依存症のカウンセラーとして働いています。

--ジョニーさんも服役中に独房に入れられた経験があるそうですね。その時のこと詳しく教えてください。

 独房には6回入ったことがあります。最長で半年間出させてもらえなかった。コンクリートの室内にはベッド、トイレと洗面台があるだけで、両腕を広げたら壁に指先があたるくらいの狭さです。そこでの体験は毎回異なりますが、ネガティブな考えや犯罪的思考で頭がいっぱいになる時もあれば「次こそ絶対に更生したい」と思う時もありました。

--ほぼ24時間1人で生活するわけですが、どのように過ごしていましたか?また、どんな物なら持ち込みOKなのでしょう?

 私が入っていた独房では3日に1度、3時間だけ外で運動が許されました。シャワーは2日に1回。1人でいる時は軽い運動や読書、手紙を書いたり、隣の独房にいる受刑者と話をしたりして過ごしていました。とにかく考え事をしたり、自分の心と会話をすることが多かったです。

 持ち込める物は歯ブラシ、デオドラント、石けんやシャンプーなど、必要最低限のものだけ。しかし、それらはすべて加工されています。例えば歯ブラシは普通の3分の1くらいで、口の中に入るサイズ。石けんも通常の大きさの半分、固形のデオドラントはケースから出され、すべてプラスチック袋に入れて渡されます。脱獄や自傷行為を避けることが理由のひとつです。

--どのような受刑者が独房に入らされるのですか?

 看守や他の受刑者に暴力をふるったり、言うことを聞かずに暴れたり、麻薬を持ち込んだのがバレたりすると独房に監禁されます。私は計28年間服役生活を送りましたが、なかには20年以上、独房に監禁されていているという受刑者もいました。いま私が、こうしていられるのは幸運だとしか言いようがありません。

  ◇   ◇   ◇

 独房は1.8メートル×2.7メートルと狭小で閉じられた世界です。体を動かすこともほとんどできず、感覚は遮断され、孤独感は増していくことでしょう。これが妄想、幻覚などを引き起こします。独房に監禁されていた受刑者は服役後もこの体験がトラウマとなり、自殺率が高いそうで、問題視されてもいます。今まで私がインタビューした受刑者の中にも「1人きりで狭い空間に閉じ込められているため、気が狂いそうになったり自殺念慮が生まれたりする」と語る人もいました。

 独房に監禁されるケースとしては他の受刑者から攻撃されそうな人を集団から引き離すためや、自殺行為を防ぐためでもあります。今回のショービン被告もこれにあたるのでしょう。罪はしっかりと償わないといけません。しかし、集団リンチや自殺から命を守ろうとして独房に入れることが、結果として自殺を助長しかねない矛盾を感じてしまいました。全米各州で独房監禁のルール、制限の見直しが進んでいます。当然のことかもしれませんね。

(まいどなニュース特約・今井 悠乃)

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