窓を開けたら母猫を呼ぶ子猫の大きな鳴き声 見つけた猫はきっと「突然亡くした猫の生まれ変わり」

ふうちゃん(2歳半・メス)は、炎天下、大きな声で鳴いていた。まだ乳飲み子で、母猫を探しているようだった。たまたま換気のために窓を開けた村上さんは、子猫の鳴き声を聞き、放っておくことができず探しに出た。

■母猫を呼ぶ子猫の鳴き声

2018年9月17日、まだ厳しい残暑が続く午前中、埼玉県に住む村上さんは換気のために窓を開けていた。すると、どこかから子猫の鳴く声が聞こえてきた。

「いつも通り窓を閉めてエアコンをつけていたなら気づかなかったでしょう。外を観察してみると、通りで自転車を止め井戸端会議をするお母さんたちがいました。子供たちもまわりで遊んでいて、子猫の声を気にする様子はありません」

村上さんは、「あぁそうか。この人たちの誰かが連れている猫なのかもしれない。だから声の主を気にすることなく話に夢中なんだな」と思った。

ところが、その後もずっと、母猫を呼ぶような大きな声で鳴き続ける子猫の声が聞こえてきた。井戸端会議の人たちは全く気にしていない。「なんで? こんなに訴えてるのに?」

村上さんは居ても立ってもいられなくなり、外に出た。ちょうど井戸端会議は解散したが、それでも子猫の声は続いていた。声のする方向へ行くとやはり子猫がいた。

「角を曲がったところのお宅の前で小さな黒い塊が一生懸命鳴いていました。まだ目が開いたばかりなのに、必死に這いずり回って道路に出てしまったようでした」

お母さんは?ご飯探しに行ったのかな?それともお引越しの途中?

ガレージの中に住み着いた子かもしれないと思い、チャイムを鳴らしてみる。2階から顔をだしてくれたご主人に「お宅の猫さんですか?」と尋ねると、「いや知らないよ。うちでは面倒見てる子はいない」ということだった。

母猫が引越し途中で落としてしまったのか、他の子を先に移動したので、待ちきれなくなって出てきてしまったのか?しばらく待とうにも熱いアスファルトの上に子猫を放っておくこともできず、村上さんは「この子預かりますね。もし母猫を見かけたら教えてください!」と伝え、家に連れ帰った。

■にじが帰ってきた!

村上さんは、2017年10月10日、にじちゃん(男の子)という愛猫を急性腎不全で亡くした。まったく予期していなかった突然の別れに悲しみは癒えないままだったが、その時にじちゃんと約束をした。

「神様のところでお着替えが済んだらさ、またママのところに来てね。その時はさ、にじだってすぐに分かるようにお家の前にいてよね。ひとりで来てよ。約束だよ。待っているからね」

「きっとにじだ!」家の前にたどり着く前に見つけてしまったけど、にじが帰ってきてくれたんだ。

「こんなに大きな声で鳴いているのにみんなが気が付かないなんておかしいと思ったんだよ。もしかしてママにしか聞こえてなかったのかな?あなたはにじですか?帰って来てくれてありがとう」と、村上さんは子猫に話しかけた。

にじちゃんは白キジでシュッとスマートな美猫だったが、見つけた猫は黒白のマスク猫。

ちょっぴり長毛になりそうなふわふわな毛にとてもシュッとしそうにない丸い顔の女の子。似ても似つかない見た目ではあったが、きっと生まれ変わりだと確信した。「この子は私の子です」

子猫はまだ乳飲み子だった。しばらく数時間おきにミルクが必要になる。村上さんは共働きで、長時間留守にするため乳飲み子の世話は難しかった。保護活動をしている知人が数日前に保護した猫が自宅で出産したと聞いていたので、「乳母をお願いできないか?」と相談した。人にはまったく慣れていない母猫だったが、子猫のことは受け入れてくれた。

「母猫は大きな茶トラだったが、出産したのは3匹だけだったため、おっぱいの争奪戦になるほどではなかったからでしょう。突然現れた子猫をおっぱいが飲みやすいように誘導してくれました」

それから約1カ月半、義兄弟とともに育ててもらい、11月2日、子猫は村上さんのところに戻ってきた。しっかり大きく育ててもらったが、直前に兄弟全員風邪をひいてしまったらしく、家に戻ってきた時は鼻がズビズビの状態だった。成長した今も涙と鼻水はずっと残っている。

しかし元気いっぱいで大きな猫にも臆することなく「遊んでよぅ!」と 自分から飛びかかっていくため、成猫たちの方がタジタジだった。高いところなら子猫がついてこられないことを知っていて、成猫たちはみんな高いところから眺めていた。唯一黒白ハチワレ猫のぷちちゃんは子猫に優しく、よく遊んであげていた。子猫もそんなぷっちゃんが大好きで、すり寄っていたという。

■甘えん坊の末っ子

「にじの生まれ変わりの子。にじはどうやって帰ってきたのか?風に乗って帰ってきたのかな?」と思いをめぐらせ、風に乗ってきた子だから、「ふう」と名付けた。

ふうちゃんは怖いもの知らずで好奇心旺盛。自分より大きな猫でもまったく臆せず突進するし、遊ぶことが大好き。若干長毛気味で手足が短く、ドチドチと走り回る印象だが、パワーはピカイチ。おもちゃを見るとみんなを押しのけ最初から最後まで遊び倒す。 同じく短足長毛のぱんちゃんとは大の仲良しで、毎日追いかけっこをして遊んでいる。

とても甘えん坊で、人のそばにぴったりくっついて座ったり、そのまま眠ったりする。

とにかくくっつき虫なのに、抱っこは嫌い。抱き上げると「オロセ、オロセ!」と、ちっともじっとしてくれない。でも、膝に乗るのはOK。みんなに甘やかされた分、主張の激しい子になった。

2歳半を過ぎた今もふうちゃんの天真爛漫さは健在。いつのまにか身体は大きくなったが、手足が短いのでまだまだお子ちゃまな感じ。ずっと末っ子気質でお兄ちゃんお姉ちゃんに可愛がられている。

ふうちゃんのおかげで一番生活に変化があったのは、ぱんちゃんかもしれないが、家族が増えるとその分楽しさは何倍にも増え、村上家は毎日笑顔が絶えないという。 

「家に来た経緯はにじとの約束のシチュエーションに似ていましたが、当然ながらにじはにじ、ふうはふう、どちらも大切な子供たちです」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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