車両の長さも、連結する数も違う!相互直通運転は苦労がいっぱい 山陽・近鉄の電車が乗り入れる阪神本線

関西の鉄道と関東の鉄道を比較すると、関西は相互直通運転を実施している路線が少ないことがわかります。そんな中、2社の電車が乗り入れる路線が阪神電気鉄道阪神本線(大阪梅田~元町)です。今回は相互直通運転の観点から阪神本線を見ていきます。

■相互直通運転が少ない関西の鉄道

関西の鉄道は関東と比較すると、他社線に相互に乗り入れる相互直通運転が少ないことが特長です。たとえば京浜急行線では京急、京成、都営地下鉄、北総鉄道、千葉ニュータウン鉄道の計5社の電車が見られます。長年、相互直通運転を実施しなかった相模鉄道も2019年11月にJR埼京線・川越線への乗り入れを開始しました。このように関東ではJR東日本も含め、積極的に相互直通運転に取り組んでいることがわかります。

一方、関西では相互直通運転を実施している路線は少数にとどまります。関西大手私鉄の中で他社の電車が見られる路線は阪急京都本線・千里線・宝塚本線・阪急神戸高速線、阪神本線・阪神なんば線・阪神神戸高速線、近鉄京都線・奈良線・けいはんな線、京阪京津線(京都市営地下鉄東西線への片乗り入れ)、南海高野線です。JR西日本にいたっては京阪神エリアにおいて他社に乗り入れている路線はありません。

またほとんどの路線では乗り入れる鉄道会社は1社しかありません。そんな中、2社(近鉄、山陽)の電車が乗り入れる路線が今回紹介する阪神本線です。

■阪神尼崎~神戸三宮間は百花繚乱

阪神電気鉄道阪神本線は大阪梅田~元町(兵庫県神戸市)間32.1キロの路線です。阪神本線は神戸と姫路を結ぶ山陽、奈良から来る近鉄と相互直通運転を実施。阪神と山陽は大阪梅田~山陽姫路、阪神と近鉄は近鉄奈良~神戸三宮(新開地)間にてお互いの電車が乗り入れます。つまり、阪神本線で近鉄と山陽の車両が同時に見られる区間は尼崎~神戸三宮間です。

近鉄電車は白と赤色もしくはグレー、白色、黄帯の塗装をしています。また阪神電車は全長19mに対し、近鉄電車は21m!  そのため阪神電車よりもずいぶん大きく見えます。近鉄は快速急行で乗り入れ、神戸三宮と近鉄奈良を約1時間20分で結んでいます。近鉄のシンボルといえば近鉄特急ですが、2021年4月現在、定期ダイヤで近鉄特急が神戸三宮に来ることはありません。ですが、臨時貸切列車での乗り入れ実績はあります。

山陽電車は銀色に赤帯を基本としています。また転換クロスシート車が多く、ちょっとした旅行気分が味わえるのも特長です。主に大阪梅田~山陽姫路間を走る直通特急で乗り入れ、同区間を約1時間30分で結んでいます。近年、山陽は新車6000系を登場させ、1986(昭和61)年登場の5000系もリニューアル。同時に華やかな塗装になり、電車ウオッチングを楽しいものにしています。 

■駅の改良も必要! 苦労が多い相互直通運転

このように山陽と近鉄が乗り入れる阪神本線ですが、先に乗り入れを開始したのは山陽です。山陽が阪神本線に乗り入れたのは1968(昭和43)年のこと。当初は元町~大石(兵庫県神戸市)間のわずか4.5キロでした。阪神も山陽姫路ではなく須磨浦公園(兵庫県神戸市)止まりでした。今日のように大阪梅田と山陽姫路が1本の電車で結ばれたのは1998(平成10)年のことです。

一方、近鉄と阪神の乗り入れは昭和時代から計画されましたが、実現したのは阪神なんば線が開業した2009年のことです。先述したとおり阪神と近鉄では車両の長さが異なるため、カーブ上にある御影駅のホームを微調整。さらに平日は阪神本線6両、阪神なんば線・近鉄奈良線8両以上にするための車両の連結・切り離しが尼崎駅で行われています。

昨年3月から土・休日ダイヤに限り、阪神本線でも大半の快速急行で8連化がスタートしました。ところが、ホーム両側に踏切道がある芦屋駅(兵庫県芦屋市)にはどう頑張ってもホームは延長できません。仕方がないので、土・休日ダイヤだけ快速急行は芦屋駅を通過します。

このように相互直通運転には様々な歴史や苦労が隠されているのです。そのようなことを少しでも知った上で乗り入れ車両を見ると、見方が変わるかもしれませんよ。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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