山陽電車「S特急」とは何ぞや? 50年オーバーのベテラン車両で走る“播州路”の旅

皆さんは列車に乗る際に必ず「普通」や「特急」などの種別を目にすると思います。神戸と姫路を結ぶ山陽電気鉄道には「S特急」というユニークな種別があります。ちょっと不思議?な実態を調査するべく、始発駅の高砂駅(兵庫県高砂市)から乗車しました。

■「S特急」の「S」って何?

「S特急」は山陽電車が運行している種別です。朝・夕ラッシュ時と深夜に運行され、神戸三宮まで乗り入れます。そのため大阪梅田で「S特急」を見かけることはありません。

「S特急」は1991(平成3)年のダイヤ改正時に、同年まで運行されていた「通勤特急」を発展させる形でデビューしました。「S特急」というユニークなネーミングは利用客からの公募により決められ、「Service」「Speedy」「Smart」「Short」を意味しているとのこと。先にも後にも山陽電車以外で「S特急」という種別は設定されていません。

「S特急」の停車駅は大阪梅田と姫路を結ぶ「直通特急」よりも多く、東二見(明石市)~姫路間は各駅に止まります。他社の種別で当てはめると「急行」や「区間特急」といった感じです。

■50年オーバーの車両で楽しむ「S特急」の旅

「S特急」に乗車するべく、始発駅の高砂駅を訪れました。高砂駅がある高砂市は三菱重工高砂製作所をはじめとする工場が立ち並ぶ工業地帯。そのため朝・夕になると多くの工場関係者が高砂駅を利用します。

神戸三宮方面のホームで待っていると、高砂17時29分発「S特急」阪神神戸三宮行きが入線。驚いたことに昭和時代の塗装を再現したリバイバルカラーの3000系でした。この編成はこの編成は1968(昭和43)年製造なので、50年オーバーの大ベテランです! 「S特急」は6両編成では運行されないため、普段は「普通」として活躍するベテランも運用に就くことがあります。

側面の表示器はシンプルに「S特急」のみ。「S」という字体が横に流れている感じで、独特のものになっています。

姫路から来た17時27分発「直通特急」からの利用客を乗せ、17時29分に神戸三宮を目指して高砂を後にしました。

先述したように東二見までは各駅に止まります。どの駅からもサラリーマンや学生が乗り、車内はほどよい混み具合に。帰宅ということもあり、車内は昭和の雰囲気とも相まってのんびりとしたムードが漂います。

東二見からいよいよ「S特急」の本領発揮。東二見~明石間(11.6キロ)は藤江しか止まらず、時速100キロオーバーの高速運転を行います。最近の列車では聞かれなくなった重々しい走行音を奏でながらの爆走は迫力満点。「まだまだ若い者には負けん!」と、どこからか聞こえてくるような感じです。

17時53分にJR神戸線(山陽本線)の接続駅である明石駅に到着。ここで大半の乗客が降ります。明石駅の電光掲示板を見ると「S特急」「直通特急」と仲良く「特急」が並んでいます。山陽電車のような中小私鉄では珍しい光景ではないでしょうか。

明石~阪神神戸三宮間の「S特急」の停車駅は少し複雑です。まず「直通特急」が停車する舞子公園(神戸市垂水区)には止まらず、代わりに隣駅の霞ヶ丘(同市)に停車します。また一部の直通特急が停車する西元町駅(神戸市中央区)には止まりません。

高砂を出発して1時間後の18時27分に終点の阪神神戸三宮駅に到着。到着後「S特急」はすぐに「回送」となり、折り返し設備がある大石(神戸市灘区)に向かいました。

「S特急」はサラリーマンや学生が利用する「通勤特急」のような列車であることがわかりました。なお今回乗車した3000系リバイバルカラーの時刻表は山陽電車ホームページで公開されています。「S特急」乗車時に参考にしてくださいね。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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