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豊田真由子、実は男性も大きな重荷を背負っている… 男性に対するジェンダーバイアス

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森会長発言が大きな問題になりました。発言を批判し、会長を交代させることだけでは、なんら問題の本質的解決にはなっていない、ということです。我が国に、いまだ深く広く根付いている「ジェンダーギャップ問題」について、その実相と本質、そこに存在する深い溝やバイアス、そして、その解決の方途について、行政・政治・国際社会等でのリアルな経験も踏まえ、数回に分けて、考えてみたいと思います。

(1)そもそも、ジェンダーギャップとは?(2)ジェンダーの考え方は、時代によって変わってくる(3)男性に対するジェンダーバイアスもある(4)日本の『女性活躍推進』が、うまくいかないのはなぜか?(5)どの性の人も、どの世代の人も、どんな環境でも、生きていきやすい社会を~時代は変わってきている。希望は大いにある。このうち今回は「そもそも、ジェンダーギャップとは?」について、考えてみます。このうち今回は(3)の男性に対するジェンダーバイアスもあるについて、考えてみます。

■男性も女性も同じ、弱いところもある

私は、男性ばかりの職場で仕事を続けていくうちに、男性もまた、別の大きな重荷を背負っているのでは、と考えるようになりました。「男は、生涯働いて、大黒柱として家族を養わなくてはいけない。常に強くかっこよく、決して弱音を吐いてはいけない。」--多くの男性はずっと、こういう暗黙のプレッシャー・ジェンダーバイアスの中で、生きて来ざるを得なかったのではないでしょうか。

でも、本来は、男性も女性も同じ、弱いところもある人間のはずです。仕事の重圧や人間関係や経済的負荷、その他いろいろ、人生苦しいことがたくさんある中で、それでも、職場でも家庭でも、常に“頼られる存在”として、強くあらねばならないとしたら、気を張って生きていなければならないとしたら、それは、とてもしんどいことなのではないでしょうか。

2020年の自殺者(20919名)のうち、67%(13943名)が男性です。なお、2020年の自殺者は、2019年より、合計で750人(3.7%)増え、特に女性は885人(14.5%)増の6976人です。年代別では、40代が3225人(71人増)と最も多く、中高年層の割合が高く、増減率では、20代(2287人)が17%増(329人増)と最も高くなっています。小中高生の自殺者は440人(68人増)で、同様の統計のある1980年以降で最多でした。新型コロナの影響も大きいと言われており、雇用対策やメンタルケアなど早急な対応が求められます。(速報値 警察庁・厚生労働省)

ジェンダーギャップの解消のためには、家庭で家事育児を分担することが必要だと言われます。ただ、男性の側が、家事や育児をできるだけ分担したい、家族や自身の人生に、もっと時間やエネルギーを使いたいと考えていても、女性がそう望む場合よりもより一層、周囲や社会の理解を得られにくい状況、例えば、2019年の男性の育休取得率は、7.48%(女性は83.0%)では、結果として、なかなか参画できない、そして妻からは叱られ、家族関係がギクシャクしていく、職場環境もきびしくなっていく、社会としても、女性の負担が減らない、活躍も進まない、という切ない状況があると思います。

年配の方も、これまで家族のために必死で働いてきたのに、仕事人間だった自分は、気が付いたら家族から疎まれ、家に居場所が無い、熟年離婚された、というようなケースが多くあります。女性の長年の鬱積や不満も、男性の立場ややるせなさも、両方身に染みて想像できる者としては、非常に切ない思いがします。

また例えば、平日の昼間に、公園で子どもを遊ばせている男性を見ると、「育休中かな、専業主夫の方かな」と気になって見てしまうことがあり、あ、これって、その方が女性だったら、なんとも思わないよな、ジェンダーバイアスだ…と、気付いてはっとします。

「男の子だから、泣いちゃいけない。将来のことを考えた進路を」「女の子だから、この習い事、この服装」--男女平等を希求し、子どもたちにはさらに生きやすい社会を、と願っている同年代のお母さんたちが、こう口にするのを聞くたびに、モヤモヤし、ジェンダー問題の深さを実感します(言えないけど…)。

  ◇   ◇   ◇

ジェンダーの問題というのは、非常に多様・複雑で奥が深く、一筋縄ではいきません。その実効的な解決・改善のためには、様々な角度から、いろいろな立場のいろいろな方の気持ちを慮ることが、求められていると、改めて実感します。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

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