「散歩中10秒ごとに目が合う」元聴導犬がわが家にやって来た!飼い猫は「待て」を覚えた

 結婚6年目の主婦「ていない」さん夫婦の家に2020年11月、ビーグルのミックス犬「かるちゃん」(13歳メス)がやってきました。身体障害者補助犬の聴導犬として活躍していた元働く犬です。先住猫の「おばけちゃん」(ノルウェージャンフォレストキャット、9歳メス)は当初、無視したり、シャーと威嚇したり。2カ月が経ち、2匹の関係に変化はあったのでしょうか。

■聴導犬の仕事とは

 盲導犬といえば知っている方は多いと思いますが、聴導犬の役目はご存じですか。厚生労働省によると、聴覚に障害のある人に生活の中で必要な音を知らせる犬のこと。例えば、玄関のチャイム音やメールなどの着信音、赤ちゃんの泣き声、車のクラクションなど。盲導犬や介助犬と共に身体障害者補助犬と呼ばれており、身体障害者補助犬法に基づき訓練、認定されます。日本国内での実働頭数は、盲導犬909頭に対し、64頭(2020年10月1日現在)です。

■短期間の預かりボランティア

 コロナ禍のため在宅勤務が続くていないさんの旦那さんは「今なら犬を迎えてもペット同士が慣れるまでずっとそばにいられるのでは」と思い立ちます。引退した補助犬のニュースを頼りに、たどり着いたのが日本聴導犬協会のホームページでした。

 同協会には聴導犬の候補犬である子犬を短期間預かって育てるボランティア「ソーシャライザー」があります。夫婦はさっそく志願。しかし、希望する長毛の小型犬がいない時期だったことや犬を飼うのは初めてということが考慮され、猫と同居経験のある元聴導犬のかるちゃんがやって来ることになりました。

■意外や意外、玄関の呼び鈴が鳴ると…

 かるちゃんとの暮らしについて、ていないさんに聞きました。

 ーー家に来た当初、かるちゃんの様子は?

 「食事と散歩以外はずっと布団で寝ていました。ドライな印象で、別にこちらを嫌っているという感じでもないのですが、特に甘えてくる感じでもなく、自分で自分の機嫌をとって、楽しく暮らしてるという感じで、夫と感心していました」

 ーーその後は?

 「半月ぐらい経った頃から私が買い物から帰ると玄関まで走って迎えに来てくれるようになりました。その頃から一緒に寝たがって布団にやってくるようになり、今では人間2人と犬、猫の全員が並んで寝ています」

 ーー意外だった点は?

 「盲導犬や警察犬はハードワークなので老いが早いというような噂を耳にしたことがあるのですが、13歳のかるちゃんは元気でノリが良く若々しいです。優しい性格ですが、けっこう適当でいつもご機嫌でおおらかな犬です。こちらのペースに合わせることなくマイペースに暮らしています」

 「(玄関の)ピンポンが鳴ったら教えてくれるかなと淡い期待を抱いてお迎えしたのですが、一切教えてくれません。鳴ったときにかるちゃんを見ると、ピクリとも動かず寝転んだままこちらを見ていて目が合います。『もう引退したから働きませんよ』という心の声が聞こえてくるようです」

■散歩中10秒に1回ぐらい目が合う

 それでも「やはり聴導犬だったんだな」と感心することは多いようです。

 「かるちゃんのすごいところは、散歩中に10秒に1回ぐらい目が合うことです。毎日チラチラこっちの様子をチェックしながら散歩してくれます。他の犬に吠えられても吠え返さなかったり、階段を上るときにペースを合わせてくれたり。さすが元聴導犬!と感心します」

 「朝はすごい勢いで布団に飛び込んで来て起こしてくれます。まず枕元までやってきて顔を1センチぐらいの至近距離まで近づけて『起きてる?目を開けてる?』と確認して、私が起きないと布団の上を転げまわり四肢をばたつかせ、私をキックしまくります。飼い主を起こすことが大切なお仕事だった名残なんだろうなあと。暴れまわる姿のかわいさと、立派にがんばっていたんだなあといういじらしらに、きゅんとします」

■先住猫さん、当初は威嚇するも…

 ーー先住猫おばけちゃんの様子はいかがですか?

 「かるちゃんが来た当初は無視したり、シャーと威嚇したりでしたが、数日で慣れ、かるちゃんが大好きになりました。今ではかるちゃんが寝ているとそばに寄り、一緒に寝ています」

 「かるちゃんがお尻をむけると、お尻の穴をペロペロ舐めています。でもかるちゃんが遊ぼうよと尻尾を振ってアグレッシブに誘ってくると、怒り出して猫パンチをしています。両思いなのですが、遊びのノリが違うため、見ていてじれったいです。おばけちゃんはペロペロイチャイチャしたいようなのですが、かるちゃんはドタバタジャレジャレしたいようです」

 「おばけちゃんはかるちゃんがきてから『待て』もできるようになり、数日前からは、かるちゃんが布団を転げ回っている様子を真似たようなしぐさもするようになりました。今まではキャットフード以外は食べなかったのですが、かるちゃんが食べるものは何でも食べたいようで、ゆでたささみなども食べられるようになりました。かるちゃんをまねすることで2カ月前よりかしこくなっている気がします」

 かるちゃんの滞在期間は2カ月間の予定でしたが、緊急事態宣言の影響もあり、お預かり延長中だそうです。

 聴導犬ボランティアについては、日本聴導犬協会ホームページへ。

(まいどなニュース・金井 かおる)

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