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生徒たちの作陶を見守る陶芸教室の猫 うちの福招きねこ~西日本編vol.26

 奈良市にある陶芸教室「土楽猫(どらねこ)工房」。主宰する陶芸家・奥田知子さん(62)の飼い猫、茶白の「クゥ」(オス、13歳)は、教室の生徒たちがやってくると体をこすりつけて歓迎。「クゥちゃん先生」と呼ばれ親しまれている。生徒たちの作陶をそばで見守るほか、猫をモチーフにした人気作品を手がける奥田さんのインスピレーションの源にもなっている。奥田さんにクゥとの出会いや教室での様子などを聞いた。

 奥田さん クゥと出会ったのは2007年10月。当時、私は焼き物のまちとして知られる愛知県常滑市の土管坂で、透かし彫りのランプ作品などをメインとしたギャラリーを営んでいたのですが、前を通った散歩中のワンちゃんが吠えるので、なんやろうと外へ出てみると、道路の真ん中に、生まれたばかりのクゥが落ちていたんですよ。おそらく母猫がくわえて運んでいる途中、何かにびっくりして落としていったのかもしれません。

 推定生後3日くらい。乾いたへその尾がついていて、目もあいていませんでした。すぐに保護し、最初は注射器で、その後は哺乳瓶でミルクを与え、お尻をトントンたたいて排泄を促すなど、母猫に代わってつきっきりで世話をしました。

 私の奈良の実家では、母も猫好きで、小さいころから猫に囲まれて育ちました。93年、常滑に行って以来、地域の猫に接する機会はあったものの、もしいい出会いがあれば自分で猫を飼いたいとずっと思っていました。まさかギャラリーの目の前で、生まれたばかりの赤ちゃん猫を拾うとは想像もしていませんでしたが、これも運命だと思い、うちの子にしたんです。好きな言葉の一つに「色即是空」があり、その中の「空」の一字をいただいて「クゥ」と名付けました。

 2013年、常滑から奈良へ戻り、実家で陶芸教室を始めることに。その少し前から猫のいろんな表情やしぐさを土で独自に表現するのが楽しくなり、透かし彫りのほかに、猫をモチーフにした陶器を作るようになりました。

 そう思ったのは、やはりクゥの影響が大きかったです。赤ちゃんのころから現在まで、私の創作をすぐそばで見守ってくれていますし、様々な表情やしぐさをいつも間近でみせてくれますからね。猫の姿をしてるけど、実は人間の男の子なんじゃないかと思って、ひらめくこともあります。だから、私の作品はほとんどが男の子になってしまうんですけどね(笑) 。

 教室の呼び鈴がなって生徒さんがこられると、クゥは玄関先まで迎えにいき、体をこすりつけて挨拶することが多いです。生徒さんがテーブルで食器や花器などの作品を作り始めると、「なに作ってるん?」といった顔をしながら、隣で座ってじっと見ていたり、時には邪魔したり。教室ではそんなふうにクゥがいるのが普通なので、たまに奥で寝ていて教室に出てこない時があると、生徒さんたちから「クゥちゃん先生、今日はどうしたん?」と心配されるほど。おかげさまで人気者です。

 体験教室もやっているんですが、昨年、大阪からこられた30代のこんなご夫婦がいらっしゃいました。奥様が陶芸と猫が大好きだそうで、旦那様が彼女の誕生日にサプライズをしようと、事前に何も知らせず、奥様をここへ連れてこられたんです。陶芸体験と猫との触れ合いを同時に楽しまれて、彼女は大喜び。旦那様が必死でろくろを回しているのもそっちのけで、クゥをなでていました(笑)。

 クゥを見ていていつも思うのは、猫ってすごく自分の気持ちに正直だなあということ。甘えたいときに甘え、気に入らないときは呼んでもこない。凛としていて、自分を崩しません。人間社会では、意にそぐわないことや、我慢せなあかんことなどいろんなことがあって、いつもそんなふうに生きられるわけではないでしょう。だから、生徒さんたちには、ここへ来たら、自分の気持ちを解放して、人の目を気にせず、自由に土に触れてもらいたい。「クゥちゃん先生」のそばで、思うぞんぶん土いじりを楽しんでほしいと思っているんです。

【店名】「土楽猫(どらねこ)工房」

【住所】奈良市東紀寺町2-2-1

【HP】www.doraneco-koubou.com

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