車椅子向けのジャケットセットアップが話題に 「全ての人が大好きな物着て自分を表現出来る世界になれば…」

「以前、車椅子に乗る男性がこんな事を伝えてくれた。" 車椅子に乗ってると、ジャケットの後ろの裾がクシャクシャになるから、短い丈のジャケットがあったら良いんだけど…男性用って無いんだよねー"って。だからそんなジャケットとそれに似合うbottom'allで新たなフォーマル作っちゃいました 」

𝘒𝘌𝘐 𝘏𝘐𝘙𝘈𝘉𝘈𝘠𝘈𝘚𝘏𝘐こと株式会社とっとリンク代表取締役、一般社団法人日本障がい者ファッション協会代表理事の平林景さんが考案した車椅子向けのジャケットセットアップがSNS上で大きな注目を集めている。

車椅子に座ってもシワができず、体にフィットしたシルエットが際立つファッショナブルさに、SNSユーザー達から「車椅子の方もおしゃれしたいですもんね」「確かにジャケットの長さは腰かけるとビミョーなところにくるかも。短めはすっきりしてステキです」「カッコイイですねー!全ての人が大好きな物着て自分を表現出来る世界になるといいですね!」など数々の絶賛のコメントが寄せられているこのセットアップ。

その制作に込められた思いについて、平林さんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):件の車椅子の男性からご意見を聞いたとき、どのような感想をお持ちになったでしょうか?

平林:「確かになー!」って言っちゃいました。僕が障がい者のためのファッション協会を立ち上げたきっかけでもあるんですけど、一般的な洋服って障がい者にとって案外ハードルが高いんですね。

男性は若い頃はお洒落に気をつかう方だったんですが、歳を取るにつれその気持ちを封印するようになったそうなんです。洋服を買いに行ってもほとんどの試着室に入れないし、デザインのこったものだと自分一人では脱着もできない。「お洒落をするという自分の欲求に誰かの手をわずらわせるのが心苦しくなった」とおっしゃっていて…。「じゃあそんな罪悪感すら抱かないほど欲しくなる、めちゃくちゃカッコイイ服を作ってやろう」って思いました。

中将:しかし実際にそれを実現するには大変なご苦労があったんじゃないでしょうか?

平林:はい、まず脱着しやすいという条件をクリアしなければいけませんでした。試行錯誤しているうちに大学の教授から「巻きスカートがいいんじゃないか?」というご意見をいただき、それを元にアイデアをふくらませていきました。今回発表したセットアップはジャッケットにフォーカスされがちですが、下の巻きスカートも大きなポイントなんです。真ん中にチャックがあるので脱着しやすいですしトイレにも行きやすい仕様です。

もちろんジャケットにも大いにこだわっていて、巻きスカートとあわせてちょうど綺麗に見える丈、座った時に後ろはもちろん前もクシャっとならない仕立てにするには苦労しました。あと、写真では見えないのですが、脇のところにチャックがあって腕に麻痺がある方でも着やすいように配慮しました。

中将:徹底的に着る方の立場に立たれたデザインですね。このセットアップは現在すでにどこかで販売されているのでしょうか?

平林;今後、春の発売に向けてクラウドファンディングをする予定です。車椅子でも、障がいがあってもお洒落をしたいという方に少しでも広めたいと思っています。

中将:今回の発表に好意的なコメントが多数寄せられていますが、反響へのご感想をお聞かせください。

平林:実はこのセットアップで2021年10月のパリコレを目指しているんです。今回の反響は、それに向け自分たちがやっていることの方向性に間違いはないんだなと大きな自信になりました。

「株式会社とっとリンク」

所在地:兵庫県尼崎市南武庫之荘1丁目29-23

「一般社団法人日本障がい者ファッション協会」

(Japan Persons with disabilities Fashion Association)

所在地 :大阪府茨木市中総持寺10-1

 ◇ ◇

平林さんは今回発表したような障がいしゃ向けファッション事業以外にも、介護業界のイメージアップや2025年問題(人口比率の多い団塊の世代が介護の必要な年代に達し、深刻な介護従事者不足が予想されている問題)の解消に取り組んでいる。現在、そのPRのため「介護甲子園2020」にエントリー中なので、ご興味のある方はぜひYouTubeにアップされた動画をチェックしていただきたい。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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