「出張戦隊すしMaster」結成を計画 若き職人の挑戦、寿司屋のキッチンカーを作りたい

クラウドファンディングで資金を募り、出張寿司のキッチンカーをつくろうと奮闘している若き寿司職人がいる。店舗をもたない出張専門の寿司職人として活動する藤森正幸さんだ。新型コロナの影響で、呼ばれていたイベントがすべてキャンセル。そんなとき、閃いたアイデア…「お客さんがお店に来られないなら、お店ごとお客さんのところへ行けばいいじゃないか」。車が行けるところならどこへでも。実現すれば「たぶん日本初」という移動式寿司屋への試みに支援を呼びかけている。

■お客さんが来られないなら自分から行く

藤森正幸さんは、17歳のとき「すし萬」で寿司職人としての修行を始めた。そこで12年勤めた後、他の店をいくつか渡り歩いて腕を磨いた。

「あるとき知人のお宅へ、寿司をつくりに行ったら、すごく喜んでくださったんですよ」

目の前で職人が寿司を握る光景は、知人の家族にはきっと新鮮でワクワクする体験だったはず。

「僕はふだん仕事で当たり前にやっていることが、こんなに喜ばれるのかと意外だったんです」

お互いに新鮮な感動を味わった。

「こんなに喜ばれるんだったら、この形を仕事にしたら面白いのではないか?」

こうして藤森さんは2年前、店舗をもたない出張専門の寿司職人「出張料理すしMaster」として独立。介護施設、ホテルの宴会場、企業のパーティー、個人宅のホームパーティーなど年間100件ていどの出張をこなすようになった。

ところが、事業が軌道に乗り始めた矢先のコロナ禍で、イベント関係はすべてキャンセル。春先の花見シーズンには京都からもお呼びがかかっていたが、それも中止になった。

「人が外へ出なくなりました。外食が憚られるようになって、飲食店の売り上げが激減しました」

そんなとき、着想したのがキッチンカーだった。

■開業資金をクラウドファンディングで募る

「2年前からやっている出張寿司が大阪で数件しかない、ひじょうに珍しい形態なんです。寿司屋のキッチンカーにいたっては、ネット検索した範囲では見つかりませんでした。『寿司屋とはこういうものだ』という既成概念みたいなものがあるのかもしれませんね。僕が実現させたら、たぶん日本初になると思います」

キッチンカー最大の強みは、お店ごと移動できること。保健所へ問い合わせたら、条件を満たせば生ものを扱えることも分かった。

「外出を控えているお客さんのところへはもちろんですが、離島や山奥の村落みたいな寿司屋のない地域へも、車で行けるところならどこへでも行けます。あるいは釣りのイベントに同伴して、釣りあげた魚をその場で捌いて寿司にすれば、喜んでもらえると思うんです」

   ◇   ◇

とにかく自分の寿司を知ってもらわないと前に進めない。10月23日の夜、大阪・難波御堂筋ビルでお披露目会が行われた。

時節柄、大人数を集めるわけにはいかなかったが、会場に集まった約70人に、藤森さんの寿司を試食してもらった。

この日、用意されたのは…。

・本マグロ赤身(長崎産)

・寒ブリ(鹿児島産)

・穴子(藤森さんの地元、大阪・泉州の名物押し寿司)

・京サバ寿司(長崎産を使用)

・イクラ(北海道産)

・鯛(淡路産)

・すしMaster特製巻き寿司

そしてガリも藤森さんのお手製である。

ただ70人に対して一貫ずつ握っていたら時間がかかるため、あらかじめ握っておいたものが用意された。

「お寿司を召し上がっていただきながら、ご歓談、ご交流を」の合図と同時に、用意されたテーブルに駆け寄る参加者たち。とはいえ、衛生管理は徹底された。寿司を取り分けるときは、手にビニール手袋を着けてもらい、おしゃべりは席に戻るまで控えられた。

どうやら藤森さんが想定していたよりも好評で、大皿に用意されていた寿司はどれも十数分でなくなってしまった。

お披露目会の半ばでは穴子の押し寿司のつくりかたを実演し、最後の挨拶ではキッチンカー実現にかける熱い想いと、クラウドファンディングへの協力をお願いしてお開きとなった。

藤森さんは自らマイクを握ってキッチンカー構想を説明する際、言葉をひとつひとつ大切に選びながら語る。「寿司屋のキッチンカーを、なんとしても実現させたい」という強い意志を感じた。

■出張戦隊すしMaster

「出張戦隊すしMaster」という、戦隊もののキャラクターを考えたんです」

キャラクターのデザインとロゴは、プロのデザイナーに発注した。それが5人の戦士(職人)で構成される「出張戦隊すしMaster」だ。藤森さんは「赤」で、他に4人の仲間を募ってフランチャイズ展開する構想があるという。そして「出張戦隊すしMaster」をひっさげて保育園や幼稚園を訪問し、魚を裁いたり寿司を握ったりという体験を子供たちにさせてあげたいとも語る。

「前例のないことをやろうとしていますから、ある意味、面白いです」

開業資金は現在、クラウドファンディングで募っており、11月30日までに350万円の支援が必要だ。

「寿司を通じてお客様に喜んでいただける事業をしたい。それを、いつも考えています。目指している方向は、時代にマッチしていると思うんです」

   ◇   ◇

クラウドファンディングの詳細と支援はこちら ⇒ 日本初!?出張すしキッチンカーを作りたい!出張戦隊すしマスター

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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