コロナ禍でデビューした異色の女性お笑いコンビ 「サッカー全米V」「春高バレー準V」の経歴を持つ2人のネタ動画が人気

コロナ禍の6月にある女性お笑いコンビがひっそりとデビューした。吉本興業のスターティングメンバーはコロナの影響で活動が限られる中、短編動画アプリ「TikTok(ティックトック)」などのSNS上で中高生を中心に人気を呼んでいる。ひでか(29)とさとゆり(26)は、それぞれ女子サッカー全米大会で優勝、春高バレー準優勝の経歴を持つ。「部活あるある」などのネタを投稿し、TikTokのフォロワーは2万人弱。動画の総再生回数も300万に迫る。「コロナでなかなか劇場に来れないと思うが、SNSを見て笑ってほしい」という吉本でも異色のスポ根コンビ。プロも目指せたであろう2人が、お笑い界に入った理由は?

夏空を見るとふと思い出す、部活での苦い経験や理不尽な指導。ひでかは「嫌な思い出がフラッシュバックします」と振り返り、さとゆりも「体に染みこんでいます」と話す。スポーツに青春はおろか、人生の大部分を捧げた2人。湯水のように出てくる「部活あるある」が、校庭で汗を流す中高生の共感を呼んでいる。

ひでかは中学1年からサッカーを始め、ゴールキーパーとして活躍。米国短大への留学時に、全米大会で優勝経験がある。さとゆりは小学2年からバレーボールを始め、兵庫県の強豪・氷上高2年の2012年、全日本高校選手権(春高バレー)に出場し準優勝。大学卒業後、母校でコーチをしていた。アスリートとして輝かしすぎる経歴を持つ2人を、お笑いの神様がセンターマイクの前に引き合わせた。

米国やカナダ、ニュージーランドで働きながら、クラブチームでプレーしていたひでか。日本にいる両親や友人に健在を伝えるため、インスタでネタ動画を投稿していた。好評を呼び、小学生のころから抱いていたお笑い芸人への夢に火がつく。ニュージーランドから吉本興業の「沖縄ラフ&ピース専門学校」(那覇市)に資料請求。帰国後に1期生として入学した。

母校の氷上高女子バレー部でコーチをしていたさとゆりだったが、次第に違和感を感じるようになっていた。寮生活をしながら、本気でバレーボールをする強豪校。厳しく指導するうちに「笑わすことが好きやのに、なんで怒っているんやろう」と悟った。かすかに抱いていた芸人への夢。監督の「やりたいことをやれよ」との言葉に押され、吉本総合芸能学院(NSC)への入学を志した。

ひでかは「沖縄で前の相方と解散して」大阪のNSCに再入学。さとゆりもNSCへの入学説明会に出たものの「体育会なので、雰囲気に耐えられなかった」と、裏方を養成する吉本の別の専門学校の門を叩いた。だが、表舞台への道を捨てきれずNSCに。「何百万円も吉本に払っているんですよ!でも、遠回りがよかった。そこまでして入りたいかと気づかされた」と2人は振り返る。

NSCでの相方選びで、同じスポーツ経験者として意気投合した。ひでかは「全国大会準優勝で、ひとつのことを10年も続ける根性や気合は武器になる」と相方を品定め。さとゆりも「根性論が大好きなので、ひでかは根性があると思った。今後継続力が大事になってくる」と思い、手を取り合った。

仲良しコンビ…かと思いきや、さとゆりは「同じクラスになったら絶対に仲良くなっていない」と笑う。すぐにシュートを打ちたがる猪突猛進のひでかと、トスを上げて“つなぐ”さとゆり。性格は正反対だが、ひでかは「部活でも仲良しこよしでは勝てない。勝つためにしている」と、緊張感を持って目前に迫った女芸人ナンバーワン決定戦・THE Wや、M-1グランプリの予選に臨む。

結成1年後の今年6月、正式デビュー。コロナ禍で舞台やオーディションも限られるが、SNSの反響からオファーが舞い込むこともあるという。「どんな番組でもいいので、テレビに出たい」と意気込むひでかに、さとゆりも「SNS見て笑ってほしい」と呼びかける。“吉本女芸人の顔になる”と誓い合った2人。女子サッカーとバレーで結果を残したコンビが、ネタ番組でのスタメンを目指す。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・杉田 康人)

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