特別給付金申請…各地のコンビニで“コピー難民”が続出 “代行係”引き受けた男性の話に心が洗われる

 新型コロナウイルスの経済対策として、各地で特別定額給付金の申請が始まり、コンビニエンスストアなどには免許証や健康保険証などの身分証明書のコピーをする人が続々と訪れています。でも…写真印刷やカラー印刷もできる最近の高機能コピー機は扱いに戸惑うこともしばしば。そんなお年寄りたちに偶然出くわした男性が自ら「案内係」を買って出たというエピソードがネット上で「心が洗われるよう」と話題を呼んでいます。

 今月21日、「行列のできるコピー代行屋さんとして計12人さばきました。何かいいことあればいいな」とツイートしたのは、北海道函館市でタウン誌「peeps hakodate」を発行する吉田智士さん。各地のコンビニではお年寄りを中心に“コピー難民”が続出する中、瞬く間に19.8万ものいいねが付き、「笠地蔵みたい」「かっこ良すぎる」という声のほか、コンビニ店員らからも「ジェントルマン過ぎて全力で泣いている」「レジ対応も忙しい中、本当に助かります」と感謝の声が相次ぎ寄せられています。

 「まさかこんなに話題になるなんて」と戸惑い気味の吉田さんに聞きました。

-どんな状況だったのですか?

「このコンビニは仕事場近くにあり、この日も昼ご飯を買おうと立ち寄ったのですが、初老の女性2人組が『給付金の申請で保険証と通帳のコピーをしたいけどやり方が分からない』とコピー機の前で右往左往しておられて…。代わりにコピーをしてあげたところ、続々と別の方々(皆さん6070代くらいの女性でした)が『わたしもやってもらっていい?』と来られたので、これはもう状況的に断れないですよね(笑)その後すぐに短い列は途切れたんですが、仕事場に行くまではまだ時間があったのと、申請用のコピーといっても1枚か2枚で済むのがわかったので、どうせならと思い、10分ほどその場にとどまって後からきた何人かの方のコピーを代行しました」

-よく頼まれごとをされる方なんですか?

「この地域はもともと高齢者が多い地区なんですが、たまたまその世代の方々が集中してコピーをしに来られたタイミングだったんだと思います。観光客も多い地域なので、コロナ前は外国人観光客から道案内や市電の降りる停留所などをよく尋ねられましたね。でも、私に限らずこの辺で生活や仕事をしていると、割とそういうケースは多いと思います」

-大きな反響がありました。

「驚いています。客観的に見てもそこまでいい話とも思えないんですが…(笑)。ただ、自分自身こういう仕事をしてる人間ですからその状況を楽しんでたのは事実です。お酒の席でいい話題ができたなぁくらいは考えました。結構ご婦人たちと会話をしながらやっていたので、私自身はわりと楽しんでやってましたね」

 とのこと。その吉田さんが編集長を務める「peeps hakodate」は「日本タウン誌・フリーペーパー大賞2014」で最優秀の大賞も受賞し、全国的にも注目を集めるタウン誌。“普段あまり日の当たらない函館の文化や事象に光を当てる”をコンセプトに、まちで生きる「人」の息づかいや活動を伝え続けています。フリーペーパーながら「元々、読み物ページが最優先で、店の広告はほとんど掲載せず運営している」といい、コロナ禍での直接的な打撃は少ないものの、「函館自体は観光都市なので、打撃は相当大きい」とも。さらに、「兼ねてから地元経済は不況が続いてますから、ますます消費活動は沈滞しているので、それらは今後の取材活動に必ず響いてくると思います。取材したい場所がすでに無くなったり、取材したい人がもうやめていたり…とか」と懸念します。

 それでも「これから大事にしたいのは読者の共感」と吉田さん。「コロナで荒んだ気分を盛り上げるようにむやみにあおるのではなく、しんどい状況やわずらわしい状況を『わかるわかる。私もそう』と共感できるような企画を立てたい。例えば家の中のできごと、部屋の中でしていること、商売を休業中に考えていたこと等を拾い集めて、それを軸にするとか…。ライブハウスや映画館、書店など文化資源への目配せも忘れないようにしたいですね。飲食店の苦境ばかりがクローズアップされがちですが、娯楽を提供する側の苦境をすくい取る企画を立てたいと思っています」と話してくれました。

 この同じまちで生きるからこそ-。そんな気持ちが広がったら、世の中は少し優しくなるのかもしれませんね。

(まいどなニュース・広畑 千春)

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