マンションのエレベーターホールに現れた黒猫 猫愛好家のもとで幸せに

 マンションのエレベーターホールに突然現れた黒猫、去勢もしていたが飼い主が名乗り出ることはなかった。

■エレベーターホールに突然現れた黒猫

 2014年10月、東京都に住む長坂さんの妻、愛子さんは、用事があって外出しようとマンションのエレベーターに乗っていた。1階に着いてエレベーターホールに出ると、そこには見たことがない黒猫が座っていた。「こんなところに猫が?」と思った愛子さん。そのマンションは申請すればペットを飼えるマンションだったので、誰かの猫が逃げ出したんだろうと思った。黒猫は愛子さんが近づくと体を擦り寄せてきて、すんなり抱っこさせてくれた。管理人さんに黒猫を預けて、飼い主さんを探すことにした。

 長坂さん夫妻は、エレベーター内など、住人の目につく場所に迷い猫の貼り紙をした。ペットを飼っている人は登録しているので、黒猫を飼っている人がいないか片っ端から管理会社にあたってもらったという。その間、黒猫は管理人室で預かってもらうことになった。

 ところが、1週間しても黒猫の飼い主は見つからなかった。人になれているし、去勢もしてあるので、間違いなく誰かが飼っていた猫だった。元の飼い主が捨てたのか、脱走したのかは分からない。被毛はきれいで、長い間あちらこちら放浪してきた形跡もなかった。

■このままでは保健所行き

 長坂さんは、当初「誰かの飼い猫だろう」と思っていたが、さすがに一週間も飼い主が見つからないと心配になってきた。

 「管理会社に聞くと、このまま誰も名乗り出なければ保健所に持っていくしかないと言うので、私たちが飼うことにしたんです」

 黒猫は、推定6~7歳、最初は、長坂さんが飼っている先住保護猫のレオくんとマーキング合戦をしたけれど、性格はとても温厚で、優しい猫だ。眉毛の形が平安貴族の公家を思い起こさせたので、マロと名付けたという。

■野良猫がくれた猫との縁

 いまでこそ5匹の猫と暮らす長坂さんだが、昔は猫より犬のほうが好きだったという。一匹の猫との出会いが長坂さんを変えた。

 新婚の時に住んでいたマンションに仕事から帰ると、必ずと言っていいほど1匹のサバトラの野良猫が待っていてくれた。電柱のところや階段の踊り場など場所は変わるのだが、まるで「おかえり」と言ってくれているようだった。猫にだんだん親しみを感じるようになった長坂さん。家の中に入れてご飯を与えるまでになっていた。長坂夫妻は「うちで飼おう」と決めたのだが、そう決めた途端猫は姿を消した。何日待っても現れない。やがて、その猫がよくいた電柱のところに、2匹の猫の里親を募集しているビラが貼られた。長坂さんは因縁を感じて2匹の猫を譲渡してもらったのだが、それ以来、猫の保護や譲渡活動もするようになり、しばし犬派を返上している。

 12歳のシニア猫になったマロくんは、1日のうち3分の2くらいは寝て過ごす。たまに動いて歩く姿は悠然としているという。

(まいどなニュース特約・渡辺陽)

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