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「保育園開設予定」で宅地購入→計画とん挫で待機児童に 売主の責任は問える?

 待機児童問題が深刻化する中、ファミリー層をターゲットにした大規模なマンションや宅地開発では、「保育園開設予定」を売りにするものも少なくありません。関西地方のある住宅地では、保育園事業者の経営難で計画がとん挫し、周辺地域の待機児童が急増する事態も起きています。計画通り保育園が建設されなかった場合、売主らの責任は問えるのでしょうか。「弁護士法人・響」の坂口香澄弁護士に聞きました。

 この住宅地はマンションと戸建てを合わせ700戸以上という巨大開発で、「保育園開設予定」をうたっており、5年前から入居が始まりました。自治体の保育事業担当者によると、用地は確保され、保育園事業者が購入していたようですが、事業者の経営が悪化。建設ができないうちに入居が本格化し、3年前までわずか数人だったエリア全体の待機児童数も、昨年4月時点で40人近くに上ったといいます。こうした事態を受け、自治体側は昨年度、0~2歳児対象の小規模保育園と、0~5歳児対象の認可保育園を運営する新たな事業者を公募。幸い応募があり、住宅地内には今年4月に小規模保育園が、2020年4月には認可保育園の開園が予定されています。

 担当者は「販売開始当時、このエリアで認可保育園を作るとは決めておらず、いわば不動産業者側が独自に計画していたもの。行政としてもこういう事態は想定はできていなかった。もっと早い段階で不動産業者側と調整ができていれば、もう少し早く手を打てたかもしれないが、実際の入居状況を見なければ公募しにくいのも事実」といいます。

 一方、昨年1歳の息子を保育園に預け、職場復帰する予定だった会社員の女性は、昨年に続き、今年も第4希望の園まで全て落選。育休も切れ、今は一時保育などを利用してしのいでいますが、「費用は認可保育園に通っている場合の倍以上かかっているし、何より親も子どもも落ち着かない。こんなことになるなんて…」と頭を抱えます。

 -こうした場合、売主側の責任はどうなるのでしょうか。

 「一般的に、購入者が『宅地やマンションを購入した動機に錯誤(民法95条)があった』として売買契約の無効を主張する方法が考えられますが、その主張が認められる場合は限定的です」

 -責任を問うのは難しいということですか?

 「そうですね。『錯誤』とは、意思表示をしたその当時、事実と認識との間に不一致があるかどうかが問われます。今回のケースでは、実際にマンションなどを購入した当時は保育園が計画されていた場合、購入者の認識と事実は一致しているので『錯誤』にあたりません。その後に事情が変わって認可外保育園の併設がとん挫してしまっても,錯誤にあたるとして無効を主張することはできません」

 -そうなんですね…。厳しい…。

 「ただ、購入者は、『開発地のマンションや宅地の住民専用の』認可外保育園が併設されると思っていたのに、実際計画されていたのは『住民かどうかに関係なく、自治体の振り分けで入園者が決まる』認可保育園だった場合には、購入者の認識と事実が異なるので、『錯誤』にあたります。その上で、無効を主張するためには、購入時に『認可外保育園ができるから購入する』『子どもが通う保育園を確保したいから買う』など、認可外保育園が併設されることが購入の動機になっていると、開発事業者に示しておくことが必要です」

 -示していたら、認められることもあるんですか?

 「ええ。ただ、実際に予定されていたのが認可保育園であっても、購入者が認可外保育園だ、もしくはマンションや宅地住民は確実にその保育園に入園できると認識したことに重大な過失がある場合には、無効を主張することはできません。チラシや看板に「保育園開園予定」とあるのみで、どちらか明記されていなくても、物件の資料や案内で『認可保育園であること』『住人の入園も確実でない』ことが説明されていた場合には、購入者の『重大な過失』が認定され、無効を主張できなくなることがあります」

 先の事例では幸いすぐに新しい事業者が見つかりましたが、とはいえ、たとえ数年の遅れでも利用する親子にとっては一大事。子どもの発育段階も大きく異なりますし、安心して預けられる場所を確保できなければ仕事に集中することもできません。「保育園開設予定」とうたわれていても、具体的な建設計画を聞いたり、自治体側に問い合わせたりするほか、いざという場合に備え周辺の保育施設の空き状況なども併せて調べておくほうがよさそうです。

(まいどなニュース・広畑千春)

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