「自分の子どもがほしい」との離婚訴訟、裁判所の判断は?元アイドル弁護士が解説

 タレントの磯野貴理子(55)が二回り年下の夫と離婚した。理由について磯野は、元夫が「自分の子どもがほしい」と求めたからだと明かしている。両者が合意したこととはいえ、この理由にネット上などで賛否両論の意見がわいた。離婚は協議から始まり、それで合意できなければ最終的には裁判で争うことになる。もし、「自分の子どもがほしい」という理由で離婚裁判となったら一般的にどのような展開が考えられるのか。元アイドルで歌手デビューも果たした平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

  ◇  ◇  ◇

 Q 今回、貴理子さんは離婚に応じたとのことですが、相手が応じない場合はどうなるのですか?日本の離婚についての実情を教えてください。

 A まず一般的に用いられるものとして、離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚という3つの手順があります。協議離婚は夫婦間で話し合って離婚の条件等を決定し、離婚届けを役所に提出するものです。話し合いの結果を公正証書にする方もいます。協議離婚が日本でもっとも多い離婚の方法です。次に調停離婚は、夫婦間での協議がうまく進まない場合に、裁判所にて調停委員を交え、夫婦双方の言い分を聞きながら、離婚へ向けて交通整理をしてもらうものです。第三者を交えて話を詰めるため、相手方と直接話をしたくない夫婦には適しています。最後に裁判離婚は協議でも調停でも離婚が成立しなかった場合に、裁判所に判断してもらうという、いわば最終的な離婚方法です。日本では調停を経ずには離婚裁判はできないことになっていますが、調停で決着がつくことが多いので、裁判まで進む件数は多くはありません。

 Q 「子どもがほしい」とか「子どもができない」という理由で離婚できるのですか?

 A さきほどの協議離婚も調停離婚も、結局は夫婦の「合意」を基礎にするものですから、互いに納得するのであれば離婚の理由(離婚原因)は厳密には求められません。これに対し裁判離婚では法律上の離婚原因が求められます。民法770条1項では(1)不貞行為、(2)悪意の遺棄、(3)3年以上の生死不明、(4)回復の見込みがない強度の精神病、(5)婚姻を継続し難い重大な事由の5つだけを離婚原因と定めており、5つのうちどれかに該当しないと離婚は認められません。そしてここでいう、婚姻を継続し難い重大な事由とは、たとえば相手方からの身体的・精神的DV、セクシャリティの不一致、犯罪行為による服役等、極端な場合が多く、単に性格が合わない、物事に対する意見が異なるというだけでは該当しません。ですので、最初は子供はいらないと思っていたけどやっぱりほしくなったというだけでは、民法770条1項が定めるいずれの離婚原因にも該当せず、夫婦の一方がどうしても納得できないとして裁判まで進めば、結局、離婚は認められないと判断される可能性が高いと思います。

 Q なるほど。性格の不一致や意見の対立だけでは、相手が応じない限り、法律では離婚はできないということですね。

 A そうですね。ただ、時代の変化によって事実婚、同性パートナー、シングル親等、そもそも結婚に対する考え方が多様化しています。それぞれの選択が尊重されるべき時代ですから、離婚の形も多様化するのかもしれません。我々法曹関係者も常に敏感で柔軟でなければならないと思っています。

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 平松まゆき(ひらまつ・まゆき)弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハト オールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュ-。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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