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道路にたたずんでいた子猫、耳が聴こえず右目も見えなくなったが…

 北海道の冬も終盤に差し掛かり、アスファルトの上の雪が溶け始めていた。そんなある日、道路にたたずんでいた1匹の子猫。一見すると健康そうだったが、山田さん姉妹に保護された後、聴覚を失っていることが分かった。

■道路の真ん中にいた一匹の子猫、スリスリ甘える

 北海道に住む山田さんは、妹と食事に行った帰り道、家に向かって車を走らせていた。まだ春というには寒かったが、アスファルトで舗装された道路は、ところどころ雪が溶けて路面が見えていたという。

 畑に囲まれた、ほとんど車が通らない田舎道。まるで暖を取るかのように、雪が溶けたところにいたのが福くんだった。

 「遠くから見るとゴミ袋か何かのように見えたのですが、近づいてみると子猫だと分かったので、道路脇に車を停めたんです」

 たった1匹でいた子猫は逃げるそぶりもなく、車の中から「どうしたの?」と声をかけると、「ニャア~」と鳴いた。のちに、福くんは耳が聴こえないと分かったが、その時、そんなことは思いもよらなかったという。

 「このままでは車にひかれてしまうと道路脇に猫を誘導しようと車から降りたんです。すると、福のほうから近寄ってきて、私と妹の足にスリスリ、スリスリ甘えてきたんです」

■猫が苦手な姉妹、猫を飼うことに

 実は、山田さん姉妹は、チワワを3匹飼っていたが、昔から猫が苦手だった。抱き方も分からずおっかなびっくり。かといって、このまま猫を放っておけない。

 「しばらく妹と話し合い、里親を探すことにして、かかりつけの動物病院に福を連れて行ったんです」

 獣医師は、生後6カ月くらい、脳に障害があると姉妹に告げた。先天性かもしれないし、どこか高いところから落ちたのかもしれないということだった。

 家に連れ帰ると、福くんは安心したかのようにぐっすり眠ったという。何日経ったある日、山田さんは、福くんが玄関扉を開閉する音やチワワが吠える声に反応していないことに気がついた。「まさか!?」と思い、福くんの耳の近くで手を叩いてみたが、やはり反応しない。

 「耳が聴こえてない。そう確信した時、この子をうちの子として迎えることにしたんです」

 「福」という名前は、野良猫時代に苦労した分、福がたくさん来るようにと名付けたそうだ。

■福くん、トキソプラズマで失明

 福くんを保護してから4年、2016年5月に、福くんが突然、眼をつむったまま動かなくなってしまった。

 「とても辛そうだったので、すぐに病院に連れていきました。でも、その病院では原因が分からず、眼圧が上がったままの状態が続き、網膜が剥離してしまったんです。通院していたのに失明するなんて。ショックと同時に、福に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました」

 その後、検査の結果、福くんはトキソプラズマの強い陽性反応が出て、ぶどう膜炎を発症、右眼を失明した可能性が高いと分かった。おそらく、脳障害の原因もトキソプラズマだと診断されたという。獣医師によると、トキソプラズマ陽性でも、症状が出る猫は診たことがないという。

 耳が聴こえず、失明もしてしまった福くん。脳障害の影響なのか、普通の猫なら飛び乗れるところから落ちてしまったり、不自然に首を振りながらご飯を食べたりするということがある。それでも山田さんは、福くんのことをよく観察し、福くんの部屋には障害物を置かないなど、愛情をたくさんかけて育てている。

(まいどなニュース特約・渡辺陽)

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