理由は「世界的なイカ乱獲の影響」…波紋呼ぶ「大盛りいか焼きそば」販売終了

世界のイカ類漁獲量の推移(全国いか加工業協同組合作成まとめ)
3月末の生産分で販売を終了する「エースコック 大盛りいか焼きそば」
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 エースコックの主力商品の一つだった「スーパーカップ 大盛りいか焼きそば」が3月末の生産分を最後に販売を終了するとのニュースが、日本中を駆け巡った。昭和の時代が終わる直前に登場し、SMAPをCMに起用するなど多くの人に愛され続けた商品だけに、ネット上には「これからどうやって生きていくのか」「うそだあ」との悲鳴が飛び交い、店頭でも相次ぎ品切れになっている。一方、取材を進めると、そのウラには近年の世界的なイカの需要増と、漁獲量減少が影を落としていた。

 エースコックが同社ホームページで25日に発表。理由は原材料費や輸送費などとしたが、最も大きかったのは商品の代名詞でもある「いか」だったという。

 「実はここ数年、イカの値段が急激に上がり、採算ギリギリの状況だったんです」と打ち明けるのは同社広告宣伝グループの担当者。「それでもお客様から長年ご愛顧頂いている売れ筋商品で、社員の思い入れも強かったので、調達先の見直しやレシピの改良などを重ねてきました。ですがこの先もイカの供給をめぐる見通しは厳しく、今の品質や価格を維持するのは難しいとのことで…。まさに苦渋の決断でした」と経緯を語った。

 日本近海ではここ数年スルメイカの記録的な不漁が問題になっており、昨年5月には「よっちゃん食品工業」(山梨県中央市)が「カットよっちゃん(当たり付き)」の販売終了と実質値上げに踏み切った。国内原料の高騰で、海外からの輸入も増えているが「全国いか加工業協同組合」(東京都)は「輸入物の値段も上がり続けている」と指摘。和食などヘルシーなイメージが広がってイカを食べる人が増えたことや、中国の人口増に伴う食糧需要増などが背景にあるという。

 実際、世界のイカ漁獲量の推移をみると、1980年には総漁獲量136・5万トンのうち、半分ほどを日本が占めていたが、2015年には総漁獲量は3倍の431・1万トンに増えたもの、国別には中国が最多で、日本は韓国に次ぐ7位だった。産地では北太平洋やニュージーランド、アルゼンチンなどのほか、近年はペルーなどが主産地の加工用アメリカオオアカイカなども伸びているが、ここにきてそうした海外産のイカも不漁が続き、2017年にはJR北海道森駅の有名駅弁「いかめし」も大幅な値上げを余儀なくされた。

 さらに関係者が懸念するのが、乱獲の問題だ。同組合は、「公海上や日本の排他的経済水域(EEZ)などで、統計に表れない違法・無報告・無規制の操業が横行しており、イカを捕り尽している」と指摘。北太平洋では国際的な資源管理の枠組みもあるが、イカについては具体的な検討は始まっておらず、国の輸入枠拡大や、業者による新たな産地探しも追いつかない状況という。

エースコックは「大盛りいか焼きそば」のイカの種類や産地は明らかにしていないが、販売継続を求める声に「もしも将来マーケットの状況が変われば、復活もありうるかもしれませんが…」と話す。いつかもう一度、食べられる日は来るのだろうか。(神戸新聞・広畑千春)

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