【京大・安部教授コラム】社会へ出る学生さん、なにかおもろいことやらへん?

 「科学よもやま話=3=」

 ビールが美味しい季節になってきました。「京都市清酒の普及の促進に関する条例」では日本酒で乾杯をすることになっていますが、1杯目のビールは格別ですね。

 さて、地酒を愛してやまない私ですが、覚えたてのころは、広島竹原のやや甘口のお酒を、いまでは高知や東北の辛口のお酒を好んで飲んでいます。日本酒のほとんどの成分は水ですが、日本酒の味はミネラルの多い硬水を使うか、少ない軟水を使うかによって非常に変わってきます。ここには複雑な科学があるのですが、このあたりの話はまた次の機会に。

 ところで、この文面が掲載される日は大学院生の修了式で、翌日が4回生の卒業式です。先日、研究室を卒業する学生さんたちの追いコンをしたときに、「僕らはどんな学生でした?」と聞かれました。

 これまでにそのような質問を受けたことがなく、ちょっと面喰いました。他人の評価が気になる風潮があるのでしょう。ここ10年間で卒業した学生さんたちの顔を思い出して、出した答えは「聞き分けの良い学生やったかなあ」

 最近の学生さんは良くも悪くも真面目で、社会に出てもそれなりに結果を出すのでしょうが、おもろいことをやってくれるだろうと思える学生さんの数は年々減っていっているように感じます。

 15年ほど前、英語があまりにもできなく、当時の指導教授から、「君の英語の点数はミゼラブルやなあ」と言われた学生さんは、大学院を出た後、某自動車メーカーに就職。その後、北米勤務を3年。見事に英語を話せるようになって日本に戻ってきました。為せば成る!!

 10年前、勉強と研究が嫌になって、友達の家などを転々として半年間行方不明になった学生さんがいました。最後は祖母の家であえなく“御用”となり、母親からさんざん叱られたとか。その学生さんも7回生で大学を卒業して、いまは某材料メーカーで活躍しています。

 ハチャメチャな学生さんがよいかどうかはさておき、個性的な学生さんはおもろいことしてくれるかなあと期待してしまいますね。日本酒はエタノールと水がほとんどの構成成分ですが、作り方によって味が違い、個性が出ておもろいです。これから社会人になる学生さんへ、社会に出て、なにかおもろいことをやりませんか?

 ◆安部武志(あべ・たけし)2009年、40歳で京都大学工学部研究科教授に就任。電池技術委員会賞、炭素材料学会学術賞などを受賞。京大工学部卒、大阪府出身、50歳。趣味はゴルフ。

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