すし久兵衛VSオークラ 「格落ち」訴訟の行方は…「行列」北村晴男弁護士に聞く

 ホテルオークラ東京の建て替えに伴って店舗がメインエリアから外されたのは「格落ち」だとして、高級すし店「久兵衛」がオークラ側に1千万円の損害賠償を求めた訴訟が耳目を集めている。「格」という漠然とした価値観を俎上(そじょう)に載せた裁判。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に裁判の行方を尋ねると、「これについての学説や判例は見たことがない。難しい訴訟になるのでは」と原告側が裁判所を説得するのは容易ではないとの見解を示した。

 訴状などによると、久兵衛は1964年から、オークラ直営の高級和食店「山里」に隣接するメインエリアで店舗を構えていた。しかし、来年9月開業の新ホテルでは別棟に入るように求められた。久兵衛は「片隅に追いやられた。格落ちした場所で高級店にはそぐわない」と主張している。

 北村弁護士は、一般的に店舗が新しい場所に移る場合、旧店舗を立ち退く際に貸し主側との間で、「新しい場所についておおよその合意をするのが通常のこと」と述べ、本件に関しては「明確な合意があったとは考えにくい。それがあればこのような争いにはならないのでは」と指摘した。

 合意事項を明記した書面を交わしてはいないにせよ、口頭でオークラ側が「格を損なうような場所にはしません」などと久兵衛に伝え、一応の大まかな合意があった可能性はありうる。原告側としては今後、何らかの形でそのような合意があったと主張するか、あるいは暗黙の了解があったと主張することになることが考えられるという。

 北村弁護士は「次に問題になるのが、格とは何か、ということです」と指摘した。「格とはおそらく、商売人の方の常識とか、一般の方の見方を総合したものと考えられる。裁判所としては判断しにくいでしょう」と述べた。

 原告側としては、新しい場所が「格落ち」であることを立証するために数多くの飲食店関係者や客から、新しい場所が「格落ちだ」という陳述書を集めることが考えられるという。北村弁護士は「それで裁判所を説得できるかどうかは分かりませんが、そのようにして立証を試みることが考えられます」と述べた。

 さらに北村弁護士は「大変難しい判断。高級店の隣だから高級で、隣でなけれな高級ではないと一般的に考えられているだろうか」と、「格」を問うた本件の難しさを訴えた。

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 北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。

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