タイ発のポスト「カメ止め」 ミニシアター広報が人気の理由を探る

 「カメ止め」ブームを起こした話題作「カメラを止めるな!」(監督・上田慎一郎/2017年)は劇場公開2館から始まるとSNSによる口コミで広がり、全国200館以上で上映された。私が勤めている神戸の小さな劇場でも連日立ち見が出るほど大盛況で「ミニシアター界の救世主」とも呼ばれている。この「カメ止め」に続き、ミニシアター発でヒットしているのがタイからやってきた「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(原題・Chalard Games Goeng/2017年/タイ/タイ語/130分/字幕翻訳・小田代和子/監修・高杉美和)だ。人気の理由を探ってみた。

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 本作は中国で実際に起きた集団不正入試事件をモチーフにしている。カンニングというスリリングで刹那的な展開の学園ドラマだ。しかしそれだけでは、本作がヒットした理由として不十分だろう。

 ここで「カメ止め」ブームをおさらいしたい。ヒットにはSNSの存在が不可欠だった。映画を観た人が「カメ止め!」ポーズで撮影した写真をSNS上に公開。若者を中心に、それを観たフォロワーが映画鑑賞後に真似するなどして爆発的に広がった。「バッド・ジーニアス」でも似たような現象が起き、普段は映画館で映画を観ないような若い世代(特に10~20代)が、こぞって劇場に足を運んでいる。

 劇中ではおなじみのLINEが効果的に使われる。「ポォン」という独特の通知音とともに、海外から送られてくる回答、返信。この音が聞こえれば何かが動く-。「普段なじみあるSNSを使ってヤバイことをしている」そのハラハラ感が若者に受けたのではないか。SNS上でも、普段映画を観ないような人たちが「ハラハラした」「こんなスタイリッシュなカンニングみたことない」などと呟いている。

 本作にテレビCMを打つような予算もなかったし、有名な俳優も出演していない。しかし、今回のようにSNSで世間に広まると、書き込みを見て自分も観たい→観る→おもしろいと発信→フォロワーがその感想を見る→観たくなる→観る→発信する-のループが繰り返される。

 小さな劇場での上映だったことも奏功した。私が勤める神戸の元町映画館でも上映していたが、キャパオーバーでの満席が続いた。すると、あまり意識していなかった人でも「満席になるくらいなら面白いのでは?」と興味本位で観たくなる。

 ここでざっくりと映画の興行、上映期間について説明しよう。ミニシアターで上映するような作品は、基本的には1~3週程度で上映終了する。一方でシネコンのような大きな劇場では、ヒットすればするほど上映延長となる。近年では『君の名は。』が良い例だ。

 今まではシネコンでヒットしたものが大ヒットと呼ばれていたが、今年のヒット作は、ミニシアターでヒットしたものが追加でシネコン上映されて大ヒットを呼んでいる。今後も同様な流れで「棚からぼた餅」のようなヒット作が生まれるのでしょう。

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 最後に今後、ミニシアター発で大化けの可能性がある映画を紹介します。

・「あみこ」(監督・山中瑶子/2017年)これだけエネルギーに満ちた日本映画は珍しい。しかも監督は10代。この衝撃的なデビュー作を劇場で体験してほしい。

・「ブルー・マインド」(監督・リサ・ブリュールマン/2017年)(神戸元町映画館広報・宮本裕也)

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