「地面師」その衝撃の実態と主犯格の素性とは… 小川泰平氏が元地面師を直撃

 大手住宅メーカー「積水ハウス」が東京・西五反田にある旅館跡地の土地取引を巡って「地面師」グループに約55億円をだまし取られた事件を受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は18日、デイリースポーツに対し、主導役の一人とみられるカミンスカス(旧姓・小山)操(みさお)容疑者(58)と5、6年前からの知り合いである、元地面師の60代男性への取材を通して得た実態や同容疑者の素性などを明かした。

 「地面師」とは土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、代金をだまし取る手口の詐欺師。男性は「地面師のグループは都内に200くらいある」と説明。所有者役、印鑑登録証明書やパスポートなどの書類偽造役、物件を探して土地情報を入手する役など、役割分担して不動産をめぐる詐欺行為を行う。

 詐取する金額については「最低で5億円」で、男性は「10億円前後が一番多い。今回の契約は大きい方」だという。「私のところにも小山(カミンスカス容疑者)がこの話を持って来ましたよ。“仕事”に入っている(だましている)のがすぐに分かったので断りましたよ」と説明した。

 では、なぜ積水ハウスはだまされたのか。男性は「パスポートや権利書などが精巧に偽造されているので、弁護士や司法書士が見ても分からない」ことに加えて「積水ハウス側の不動産業者が信頼されていたはず」と証言。小川氏は「通常の一般的な犯罪には関わらない偽造グループが存在する。普通の犯罪のための偽造はやらない、こういうとき(地面師専門)だけやる。そして絶対に、口は割らない」と補足した。

 小川氏の取材に対し、男性は「今回の件も最初から最後まで計画的。警察側も公判維持に苦労すると思う。なぜかというと、一番上と下がつながっていない。頭(トップ)から指示されたわけではなく、その部分、その部分で責任を持っている」と、組織の全体像や責任の所在が見えない複雑さを指摘した。

 今回、所有者になりすましていたとして、羽毛田(はけた)正美容疑者(63)が偽造有印私文書行使容疑などで逮捕された。警視庁捜査2課は羽毛田容疑者が地面師グループにスカウトされたとみている。積水ハウスとの取引中に本人確認された際、同容疑者は干支(えと)を間違えて答えていたことが捜査関係者への取材で明らかになっているが、偽造パスポートなどの確認書類がそろっていたことから手続きが進んで大金を受け取った。

 元地面師の男性は「(事前確認などの)練習はやらないんじゃないですか。言うことは決まっている。生年月日と名前と住所くらいでしょ。家族構成まで聞かれたらプライベートなことなので言えませんといえば済む。ただ、なりすまし役も詐欺に加担している意識は当然ある。そのために報酬をもらうわけだから」と指摘する。

 小川氏は「身元が容易に分からず、犯罪歴がなく、接客業などでしゃべりが上手でコミュニケーションが取れる」というタイプとして、温泉街の仲居さんや元芸者の女性などが手配師のネットワークの中でスカウトされている現状を明かした。

 今回、家主に成りすました羽毛田容疑者の報酬について、男性は一般的な相場として「1000万~2000万円」と推測。残りの50数億円の分け方として、小川氏は「主導した者が半分くらい。30億円くらい取っていたのではないか」と、逮捕状が出る直前にフィリピンに逃亡したカミンスカス容疑者の取り分を予測した。

 そのカミンスカス容疑者について、元地面師の男性は「どんな案件にも顔を出す有名な地面師。見た目がまじめそうに見え、嘘とは思われない話術を持っているが、これまで手掛けた中で今回、初めてうまくいったのではないか」という。さらに「フィリピン人と結婚して離婚し、オーストラリア人と再婚したという話を聞いている。車はロールス・ロイス、服はルイ・ヴィトンやシャネルで1億円以上のものを身に着けていた」と証言した。

 同容疑者の今後について、小川氏は「フィリピンと日本は犯罪者の引き渡し条約がないが、警察的にも友好な関係があるので、在留期間が過ぎれば、オーバーステイで現地警察に逮捕してもらい、日本に強制送還、機内で日本の領空に入ったら逮捕という流れが通常だが、フィリピンに必ず滞在しているとは限らない。フィリピンを経由し、他の国に逃亡している可能性もある」と解説した。

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