欲望に正直な生き方求める女性たち バブル再評価ブームが続く

バブル時代を象徴するディスコ「マハラジャ」で踊る人たち=2018年5月、東京・六本木
ディスコ「マハラジャ」のイベントでバブル時代を語る田中康夫氏(右から2人目)
バブル女子の生態がイラスト化された「ベッド・イン」のアルバム「TOKYO」のジャケット
3枚

 この2~3年、日本のバブル景気時代(1986~91年)に注目した再評価ブームが続いている。お茶の間でも、2016年に平野ノラがバブル時代のOLネタでブレークし、17年は荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」が大阪・登美丘高校ダンス部との相乗効果でリバイバル。今年4月開始のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」ではバブル期の描写が話題になった。なぜ今、バブルなのか。その背景を検証した。

 5月半ばの日曜午後、東京・六本木のディスコ「マハラジャ」で「DISCOヒットパレード」というイベントが開催され、ミラーボウルの下で幅広い世代の男女が踊った。

 バブル世代の女性は「ギラギラ感がないと盛り上がらない!」。40代半ばの女性は「バブルを知っていてもディスコには行けなかった中間世代。今は年齢の壁がなくなった」と実感を込め、バブルが崩壊した91年生まれの女性は「親世代がイキイキと踊っていて新鮮。クラブより安心感もある」と満喫した。

 同イベントを盛り上げたDJ OSSHYは「向上心や競争心が人一倍あった時代。『どうすればモテるか』『人よりいい生活がしたい』『同期より出世したい』といった欲が今の若者より強かったと思います」と、当時20代だった自身の経験も踏まえて証言した。

 だが現在のバブルブームは女性中心。今年4月、米国紙「ニューヨーク・タイムズ」がその象徴的存在として取り上げた女性2人組ユニット「ベッド・イン」はバブル期生まれのアラサー世代だ。

 益子寺かおりは「SNSでの炎上や周りから浮かないようにといった抑圧がある分、バブル時代の欲望に正直な生き方が今のナウでヤングな方たちには新鮮に映るのでは」と分析。中尊寺まいは「女性が社会に出て好きなことをやる最初のムーブメント。何よりも熱量がすごい。いい意味で人の目を気にせず、やりたいことをやり抜く姿が今、憧れる女性像に近いのかなと思います」と考察した。

 元長野県知事で作家の田中康夫氏は80年のデビュー小説「なんとなくクリスタル」で、バブル文化を先取りした世界を活写した。

 田中氏は「80年代は高度消費社会になっていく時代。高度経済成長期の『一生懸命やるぞ』だけじゃなく、付加価値を身に付けようとした」と時代背景を説明。「生きていく確かさや喜びは、お立ち台で踊ることにもあり、それが1回ぐるっと回って戻ってきている。平野ノラさんやブルゾンちえみさんには、芯はマジメで裏表のない不器用さを感じさせる。その“不器用な誠実さ”で、お金には換算できない、身の丈に合った『しなやかな個』をもう1回、確かめようということだと思います」と指摘した。

 形だけならブームは去る。だが、その本質は「個」として人生をおう歌するライフスタイルにある。それが今、次世代の女性たちに受け継がれている。(デイリースポーツ・北村泰介)

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