福山シティFCが解散危機乗り越えて広島の頂点に 岡本GM「全国から支援に感謝」

 サッカー社会人クラブチームの福山シティFCが、8月23日に決勝が行われた全広島サッカー選手権大会(広島広域公園第一競技場)で初優勝を飾った。今季、コロナ禍による資金難で解散の危機に見舞われたが、地元福山を中心に全国から支援が寄せられ、チーム設立4年目で広島の頂点に立った。9月16日に開幕する天皇杯全日本選手権に広島県代表として出場する。

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 初優勝が懸かった大舞台で、福山シティイレブンが躍動した。5連覇を目指したSRC広島との決勝。前半20分、DF植田のゴールで先制すると、雷雨による約2時間の中断をはさんで再開された後半も2点を追加し、3-0で快勝した。昨年決勝で敗れた雪辱を果たし、就任1年目の小谷野拓夢監督(22)は「うまくゲームプランがはまってくれた。決勝の大一番で一番いいサッカーができた」と選手をたたたえた。

 今年、チームは体制を一新した。手腕を振るったのは昨年から代表兼GMを務める岡本佳大氏(31)。北海道から鹿児島まで足を運んで次々と有力選手を獲得。メンバー26人中22人が新加入で、元Jリーガーは8人を数える。小谷野監督は今春、北陸大を卒業したばかり。大学では3年時からコーチを務めており、「我々の目指すサッカーを体現できる」(岡本GM)という理由で抜てきした。

 ところが、新型コロナ禍によりチームは苦境に陥る。大きな痛手となったのがユニホームスポンサー企業との交渉が白紙になったこと。活動資金のメドが立たず「チームは解散寸前までいった」と岡本GMは振り返る。デッドラインが迫る中、最後の望みをかけてクラウドファンディングで資金を募集。すると支援の輪は地元福山だけでなく、全国に広がった。目標の500万円を超える約800万円が集まり、チームは解散を免れた。

 今大会も一度はコロナ禍で中止が発表されたが、その後、開催されることが決定。福山大との1回戦、広経大との準決勝はいずれも苦戦を強いられながらも勝ち上がり、決勝でSRC広島を粉砕。クラブ設立4年目で広島の頂点に立った。岡本GMは「全国の皆さまのご支援で死にかけていた命を救っていただいた。優勝という報告ができたことが一番うれしい。安どの気持ちでいっぱいです」と感謝の言葉を口にした。

 9月16日開幕の天皇杯では、同30日の2回戦で山口県代表のバレイン下関と対戦。勝ち進めばJリーグ勢との対戦も待ち受ける。岡本GMは「地域密着のクラブとして福山を活性化させることが我々の目的でもあります。天皇杯に出場することで福山の名前を全国にとどろかせることができる。福山の魅力アップに貢献できるように頑張りたい」と表情を引き締めた。

 2024年のJリーグ参入という大きなビジョンも掲げる。現在は広島県社会人1部リーグに所属しており、中国リーグ→JFL→J3とJ昇格への道のりは険しいが、解散の危機を乗り越え、チームの結束は一層強くなった。クラブ初の全国舞台となる天皇杯出場は、4年後のJリーグ入りへ向けての大きな一歩でもある。

(デイリースポーツ・工藤直樹)

 ◆岡本佳大(おかもと・けいた) 1989年6月23日生まれ。広島県出身。広島観音高でインターハイ全国優勝を経験。広島修道大を経て、一般企業に勤務しながら地域リーグでプレー。25歳で引退後は広島市でサッカースクールなどを経営し、19年から福山の経営に参画。現在は代表兼GMを務める。

 ◆福山シティFC 福山青年会議所などにより設立された一般社団法人・福山スポーツコミュニティクラブが17年2月に設立。チーム名は「福山SCC」で、広島県社会人リーグ東部3部からスタートし、昨季は県2部リーグで全勝優勝。今季「福山シティFC」に変更した。ホームタウンは福山市と備後地区。

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